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本好きの成り上がり
20話「混沌の神サパン」


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物理攻撃無効。
混沌属性無効。
無駄に多い手数。
聖属性で大ダメージ。
距離を無視して遠距離打撃を仕掛け、厄介な特殊能力を持つ。
……それが混沌の神。
正直、今の私では勝ち目はほぼ皆無だ。メルカッツから奪った首飾りを装備すれば、混沌属性対策はできるがダメージが軽減するだけ。それに遠距離打撃による連続攻撃で間違いなく死ぬ。
私の人生の難易度高すぎ?

「お嬢ちゃん。
あなたは大勢の人からモテモテのようね?
嫉妬しちゃうわぁ」

口裂け女は笑ったまま言ってくる……夜に出会いたくない顔だ。
さっさと帰ってください。

「ここに来る途中、出会った寄生生物どもを嬲り殺しにして遊んだけど……アナタの事を未来世界の聖帝とか言ってたわねぇ。
そんな偉人を玩具にできるなんて……光栄すぎるわぁぁぁぁ!!
お嬢ちゃんは今日から私のペットよぉぉぉ!!!」

いやいや、待ってください。
私はただの猫娘です。聖帝じゃありません。

「生き物はねぇ!
嬲り殺しにした時にっ!真実を言うのよぉ!
命乞いをして、私を楽しませてくれた彼らの事を信じるわぁ!」

酷い信頼の仕方だ!?

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
混沌の神サパン
無数の髪を伸ばして転移攻撃してくる強敵だ。
人間を家具にする趣味を持つ。

ミジンコと象ほどのレベル差がある。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
うん、勝ち目がない。どうしよ――あれ?
サパンの無数の黒い髪が蠢いて、アイテムボックスから、真っ白い書類が飛んでくる。
やばい。あれは――決闘書類!?

〜〜〜〜〜
神同士の決闘だ。
負けた方は、相手のペットになる。
レベルに差がありすぎるから、一時的にサパンのLvは10に調整された。
〜〜〜〜〜

負けた方は魂すら束縛される。エロイナ・オンラインの伝説上に存在するレアアイテム(ゲームの頃は未実装だった)
この化物。本気で私を玩具にする気だ。
しかも、今の私は麻痺で動けない。え……これ……詰んだ?
一度でも死んだら、その途端、私はペットにされる?
いや、この場合は家具?

「殺した後にたくさん可愛がってあげるわぁぁぁぁ!!
両手足を切り落として、脳みそをグチャグチャにしてぇっ!家具の一つにしてあげるぅぅぅっ!!!
希望はあるかしらぁぁぁぁ!?!!
椅子っ!?机っ!?お嬢ちゃんは小さいから……枕が良いわねぇぇぇぇ!!
可愛い悲鳴を上げられるようにっ!口を残してあげるわぁぁぁぁ!!!」

嫌だ。
こんなやつのペットにされるくらいなら――メルカッツ達に負けた方がまだマシだ。
無数の黒い髪が伸びる。転移してくる遠距離打撃じゃない。
ゆっくりと私の恐怖の心を楽しむように迫ってきた。あ、これ回避できな――

タタタターン!!

鈍い銃声が場に響く。
サパンの髪が銃弾で粉々……いや、ダメージはない。髪が少し横に動いただけだ。
銃弾を放ったのはサパンの後ろ。
全身黒づくめのスーツを着た茶髪の青年だ。これまた黒いサングラスを被っていて、お前はどこの国の諜報員やSPなんだと言いたくなる格好をしている。
背丈は160cm。でも、足が地面にめり込んでいて可笑しい。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
謎の男ジョン・スミス。

機械化した脳を、機械ボディに移植した機械人間だ。
二丁拳銃を愛用するが『サブマシンガンで乱射した方が効率良いだろ』と製造者に言われて、乱射魔になった。
身体を構成する部品は、カグヤ帝国製だ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ああ……なるほど。全身が機械ならとんでもない体重になるから、足が地面にめり込んで当たり前だ。
金属は肉より重し。
機械人間のスミスは、両手にサブマシンガンをそれぞれ握り――一気に低威力の拳銃弾を乱射した。
次々とサパンへと着弾。真っ白な光を周りに撒き散らす。
おお、これは良い援軍。
勝てるかもしれな――

〜〜〜〜〜〜
決闘の妨害はできない。攻撃は無効化された。
〜〜〜〜〜〜

酷い。決闘中は妨害禁止!?
いや、そういえば……エロイナ・オンラインの製作者がそんな仕様にするとか言ってたなぁ。
確か作ったのは良いがバグだらけで、一部のスキル(魔力の眼差し)は部外者が使っても有効になってしまったから、決闘システムは未実装になったんだけ。
やっぱり難易度高すぎるっ!私の人生!

「おっほほほほほほっ!
決闘中はそんな攻撃は無意味よ!
そんな事も知らないなんてお馬鹿さんねぇぇぇ!」

銃弾が着弾する度に、白い光が次々とサパンを包み込む。
これは恐らく、聖属性魔法の光。
謎の男ジョン・スミスは、この攻撃を通して私に何かを教えようとしている?
麻痺毒もようやく解除されたし、考えろ。知恵をめぐらさないと勝てない。死ぬ。
今の私は、一度でもサパンに遠距離打撃を許したら即死する。
回避しようにも、無数に転移してやってくる髪なんぞ避けようがない。
そんな哀れな身体だ。混沌の神も同じLvに一時的に落ちてはいるが、鑑定魔法を使ったら――装備品でステータスを補っているらしく、間違いなくLV200そこらのステータスを保持している。
これのどこが決闘だ。卑怯すぎる。でも、それがエロイナ・オンラインクオリティ。
自由度が高い代わりに、バランスが崩壊している。

「うざったいわねぇぇぇぇ!!!
そんな攻撃は私には通用しないわよぉっ!
カグヤちゃんをペットにした後に、あなたもペットにしてあげるわ!
男はこれだから嫌ねっ!鳴き声は醜いしっ!肉は硬いしっ!ムカツクわぁ!」

聖属性の光が、サパンを包み込んで目くらましになっているおかげで、こっちには攻撃が飛んでこない。
聖属性……銃弾……そうか。分かったぞ。
聖属性攻撃なら、この化物を倒す事ができる。スミスは遠回しにそう伝えているんだ。
ひょっとしたら、このフロアの何処かに聖属性魔法を込めた弾丸とか、アサルトライフルがあるのかもしれない。
私は周りを見渡した。
そこにはひたすら穴を掘りすぎて塹壕だらけになった第一次世界大戦のような戦場風景が広がっている。
……うん、こんな場所から探し物を見つけるなんて無理だ。
そんなもんがあったら、工事中に見つけてるはず。
なら、ひょっとして……ここで聖属性魔法を発明すれば良いのだろうか……?
魔法書三冊も読んだし、基礎も理解できているし、実際に聖属性魔法を見たから作れそうだが……時間足りるか?

「うわっ!眩しいわねぇっ!
銃弾撃つのやめなさいよぉっ!
眩しくてカグヤちゃんが見えないでしょ!
これだから男って最低だわぁぁぁぁ!!
アンタは便器よ!便器っ!汚い便器に改造してあげるっ!」

聖属性は、混沌属性の真逆。
回復と補助にも使える支援向け属性。
太陽の光とも違う。歪んだ真っ白な光。
光は波。遠ければ遠い場所に行くほど光の波は変形して伸びる。
聖属性の光は、アンデッドなど邪悪な者をなぎ払う。
すなわち――これ、一神教の設定だ。
地球での多神教は『自然にそれぞれ個性を与えた神々』すなわち自由で我が儘すぎるウンコったれすぎる連中。
一神教は『僕がかんがえた理想の神様』 という妄想。多神教の神々は邪神扱い。
いや、そもそも邪悪って何だったけ?
正義と悪なんてものは、見方次第だし……あるぇ……?
ゆっくり考えろ私。仏さんも聖属性魔法使ってたろ。
そこから考えればわかるはずだ!
仏さんの種族は神だから、なんたらかんたら

長いから以下略

……十分ほど考えて分かった。
聖属性=『他者に信仰されていると発生する謎エネルギー』だ。
私は猫の神。そして信者は少なくとも一人いる。
エミール。彼は私を純粋に慕ってくれている。
オマケでテレサさん。時空を飛び越えて私のためにやってきてくれた。
信者の数はこの時間軸にいる未来人の数次第だろうが、こんなのが動力源の魔法だから、撃ててせいぜい一発なはず。
倒しきれなくても負け。魔法の発動に失敗しても負け。
私は家具として『異世界で第二の人生を』送る嵌めになる。
だが、やるしかない。
今から作る魔法の仕様はこうだ。射程距離を犠牲にして威力を最大限にアップした聖属性魔法。それをサパンにゼロ距離から叩きつける。
そうすれば、無駄が少なくなって十倍近いダメージになるはずだ。
混沌の神は聖属性が苦手だから、十倍×十倍=百倍ダメージ。
きっと倒せる。
サパンに気づかれずに、接近できたらの話だが。
どないしよう。

「本当にうざったい光ねぇ!
私の周りが見えないじゃないのよぉぉぉぉ!!!
うざいわぁぁぁぁ!!カグヤちゃんを家具にして悲鳴を聞きたいのにぃぃぃぃ!!!」

サパンは今、周りに目標を指定しない混沌属性魔法の矢をシャワーのごとく撒き散らしている。
耐性装備のおかげで、混沌魔法食らってもダメージが十分の一以下に激減すると思うが、山ほど浴びたら私はすぐ死ぬぞ。



  この話のコメントまとめ+作者の感想
【小説家になろう】 良くある復讐展開。主人公「俺を虐めた奴はボコボコにしてぶっ殺す!」
http://suliruku.blogspot.jp/2016/01/blog-post_14.html
【小説家になろう】賢者ものが大流行中。日刊ランキング争いで激戦
http://suliruku.blogspot.jp/2016/01/blog-post_82.html


http://suliruku.futene.net/Z_saku_Syousetu/Tyouhen/Honzuki_no_naiseiti-to/c20.html


サパン「残り魔力を全部消費して、フロア全体攻撃したら勝てる」

カグヤ「!?」

 

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