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Lv0の不死王
プロローグA
博士「これはゲームではないっ……!これはゲームではないっ……!」


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追い詰められたワルキュラ。彼はとうとう最下層『円卓会議』へと降りてしまった。
ここから下はない。
いや、これ以上、掘ればマグマが出てくるから、拡張工事ができなかったと言った方が正しい。
敵が最終階層付近まで降りてくる事を想定してないから、ここらへんは普通の居住区や、娯楽施設ばっかりだ。
当然、敵を妨害するための罠も兵力もない。
だが、今の状況では時間は味方だ。

(ここで後、20分の時間を稼げば、奴らは時間切れで強制ゲームオーバー。
俺は生き残れる……だが、俺の幸せ(ハーレム)は奪われたままだ……)

広大な会議室。その中央にある玉座へと座り、ふと、周りを見渡した。
丸い大理石の円卓と、三百席の幹部椅子が並んでいる。
この椅子に座る権利を持つ連中は――激戦の最中、死に絶えた。
それはもう無残に、死体すら残らず消滅させられたり、プレイヤーの物量で圧殺され死んだ。
何時か、彼らのための墓を作ってやらなきゃいけないなぁと、ワルキュラは思ったが

(地球の墓地に囚人用の墓があるだろうし、新しく墓を造る必要ないよな……
あいつら死刑囚プレイヤーだし)

死刑囚プレイヤー。文字通り。現実で犯罪を犯して処刑された死刑囚。
死後、その魂を鳳凰院博士が日本政府から買い取った。
アンデッドやモンスターを中心とした邪悪な化物に魂を封じ込められ、この世界で悪役GMとして無償労働させられた。
ワルキュラも死刑囚プレイヤーの一人だ。
罪状は三行に省略すると……不良達に徹底的に苛められて灰色の高校生活を送っていたが
家を燃やされ、妹がレイプされて自殺したから、ついカッとなって不良どもを罠にはめて皆殺しにした。
そうしたら凶悪犯罪者扱いされて、絞首刑になって、このオンラインゲームの振りをしている異世界に送られた。ただ、それだけ
そして、その凄惨すぎる殺し方に、死刑囚プレイヤー達が勝手にびびって
『ひぃぃぃぃぃぃ!!あの凶悪犯罪事件の首謀者!?』『生きたまま燃やすのはやめてぇぇぇぇ!!』
『命だけはお助け下さいぃぃぃぃ!!!』『なんで!?なんで?!』
ワルキュラは何もやってないのに、三百人の死刑囚が自然に舎弟になった経緯がある。

(いま考えたら……日本の裁判所可笑しかったよな。
頻繁に裁判で死刑判決出てたし。きっと、この異世界で働かせるために俺みたいな善良な奴を死刑にしたに違いない)

今更、こんな事を思っても始まらない。
皆、皆、死んだのだ。
お姉さんぶって可愛い金髪エルフ娘のアトリちゃん。
銀髪ロリ吸血鬼のプラチナ・ルビーの双子姉妹。
ダイナマイトボディのダークエルフ娘なラーラちゃん。
幽霊でヤンデレ気味な娘クレアちゃん。
後は全部、ほとんど男だから名前を言う必要なし。

(皆、素晴らしい美少女だった……現実には居ないような最高の女……。
このデスゲームが終わったら、鳳凰院に削除された蘇生魔法とかで、復活してくれたら良いのになぁ……
二度も全て奪われたまま終わるのはっ……やはり辛い)

肉がない骨になっても、いや骨になったからこそ愛に飢えて元気ムラムラ。
まだ、彼女達が復活する可能性がある事を思い至った以上、ここで生きた骨から、死んだ骨にクラスチェンジする訳にはいかない。
虐め殺されそうになったら、ぶっ殺す。やられたら殺し返す。
それが不良どもを血祭りにあげ、あの世にプレゼントした彼の流儀だ。

コツンッ

硬い床を叩く足音が聞こえた。
とうとう、この最終階層の存在が露見した。つまり、そういう事である。

「見つけたぞっー!ここだぁっー!ここに魔王がいるぞっー!」

そう叫んだ男は銀色の軽装鎧を付け、背丈ほどの大剣を抱えた金髪の美少年。
激しい憎しみの炎を青い瞳から迸らせている。
職業は軽戦士。スピードを生かして手数で勝負するタイプだ。

「ワルキュラっー!
今日が貴様の命日だぁー!」

挑戦を叩きつけられたワルキュラ。骨の手で餓骨杖を強く握り締め、玉座から立ち上がる。
殺意を持って、目の前の虐めっ子を睨みつけ、杖を振り上げて

「俺はっ!俺を虐める奴を絶対に許さない!
死ぬのは貴様だ!」

絶対に負けられなかった。皆を犠牲にして生き残った以上、ワルキュラ大魔王は敗北する事を許されない。
ここで死んだら、ルビーもアトリも死刑囚プレイヤーの皆も全てが無駄死にしたという事になってしまう。



『時間をお知らします。残り三分で皆さんは強制ゲームオーバーです』



  この話のコメントまとめ+作者の感想

http://suliruku.futene.net/Z_saku_Syousetu/Tyouhen/Fusiou/c2.html【小説家になろう】 「地球サイズの隕石が地球に向かってくる!?俺が撃退しなきゃ!」 【最強賢者、異世界へ! 〜俺より強いやつに会いに征く!〜】
http://suliruku.blogspot.jp/2016/01/blog-post_12.html


【内政チート】「ザワークラウト(漬物)を作って産業チート!」 保存が効く食材は便利

http://suliruku.blogspot.jp/2016/02/blog-post_5.html


>アンデッドやモンスターを中心とした邪悪な化物に魂を封じ込められ、この世界で悪役GMとして無償労働させられた。

 
プレイヤー(´・ω・`)なにその羨ましい強制労働。
異世界で美少女ハーレムやっとるやんか!


ワルキュラ大魔王(´・ω・`)死刑になって良かった!

 

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九十九世界に存在する巨大地下城塞タュピラ。
無数の罠とNPCを使って、数多くのプレイヤーを死へと追い込んだ上位ギルド『デス・キングス』の居城である。
今、十万人のプレイヤー達が挑み、各階層で血を血で争う醜い闘争が繰り広げられている。
彼らが大損害を出しながら目指す先は最下層。目的はそこにいるギルドマスター『ワルキュラ』を殺す事。
ワルキュラは装飾だらけの黒いローブを纏ったエンシェント・リッチであり、骨を模した杖を持った死の化物にして、無数の魔法を行使する大魔王。
今までに五万人のプレイヤーを容赦なく殺し、鳳凰院ガイに協力する凶悪犯罪者。
デスゲームと化した今、プレイヤー達からそう呼ばれている。


今、ワルキュラの目の前には、エメラルドで作られた巨大な円卓があり、その周りに三百席ほどの椅子がある。
しかし、彼が座っている紅い玉座を除き全て空席だ。
空席の意味。それは座るべき人が居なくなった事を意味する。
上位ギルド『デス・キングス』は、最初は三百人の廃人プレイヤーを擁したノー・オン屈指の最強ギルド。
だが、プレイヤー達の物量の前に、次々と仲間達は死に……ワルキュラは虚しさに囚われていた。
守るものは自分の命以外に何もない。

(俺が生き残って何の意味があるんだ……?)

だが、そう思っていても命を危険に晒されると、反撃してしまう。
本能が自分に生きろ!と命令し命を奪う。
時折、最下層へとやってくるプレイヤーにも、魔法を叩き込み容赦なく殺した。
自分が生きる道を選択するという事は、十万人のプレイヤーが道を閉ざされて死ぬ事を意味する。

(でも、生きたい……理由がなくても生きたい、そう思える)

ワルキュラは、なぜ、自分がこんな人間になってしまったのか?
過去を振り返った。
そうあれは、鳳凰院博士と出会う一週間前だ。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「おいっ!クズ!
税金を俺らに収めんかいっー!」

当時、ワルキュラ。いや、葛城(くずき)は男子高校に通う少年だった。
どこにでも居そうな平凡な少年。違う所は年の離れた妹を溺愛している程度。
だが、鈴木・田中・佐藤という超極悪な不良に眼を付けられてしまった。それが彼の転落人生の始まり。
不良の顔を見るだけで葛城は土下座して謝罪した。

「ひぃぃぃぃぃ!!所得の百%を差し出すのは無理ですぅぅぅ!!」

「金ないなら親の財布から取ってこんかーい!」

「あ、明日には用意するから待ってくださいぃぃ!!」

「お前は本当にクズじゃのう!税金を納めるのは人民の義務じゃろがぁー!殺したろうかぁー!」

不良達は税金と称して、葛城から金を巻き上げた。
払わなかったら虐めという報復が待っている。
一ヶ月前、税金を払わなかった同級生がボコボコにリンチされ、最後には車道へと放り投げられて、トラックと衝突して死ぬ事故が発生した。
だが、不良達は罪を全て運転手へと擦り付け、社会的制裁を全く受けていない。
嘘みたいな話だが……この不良達の親は、想像を絶する権力者だ。
殺人くらいは治安の悪い後進国家並に簡単にもみ消せる。
それゆえに何をやっても許されると思って、このゴミどもは今まで好き勝手生きてきた。

(なんで俺がこんな目にっ……!)

もう、高校をやめて中卒のまま、どこかに就職しようと思った。
この状況が続けば、何時か虐め殺される。
下手したら可愛すぎる妹にも被害が及ぶかもしれない。
ならば、すぐに退学して県外に引っ越そう。
そう思って、授業中の学校から脱出して、家に帰ると――異変に気づいた。
玄関の鍵が開いている。
親は昼間は仕事中だから、家にいないはず。
妹は小学校に通っている時間帯だから、玄関に妹の赤い靴があるのは可笑しい事だった。
嫌な予感がした
家の中から猛烈に臭い死臭がする。
慌てて匂いを辿り、自分の部屋の扉を開けると――妹が自分の首をコードで扉の取っ手に繋いで自殺していた。
酷い死に様だ。可愛い顔が絶望に染まっている。
まるで何処かのホラー映画に出てきそうなクリーチャーみたいになっていた。

「お、おい……?!」

目に入れても良いくらいに可愛い妹の死を、葛城は認められない。
妹が自分の生きがいで、この世で一番最高の女性だったのに、なぜ死んだ。
ふと、視線を下にずらすと、床に『遺書』と書かれた手紙がある。
すぐに開封して中身を読むと、そこには――

『お兄ちゃん。死ね。
私が毎日、お兄ちゃんの友達達に犯されるのはお前のせいだ。
クズは死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね。死ね』

この内容だけで理解できた。
きっと、不良どもが妹を集団レイプした。だから妹は自分を恨んで自殺したのだ。
憎かった。悔しかった。この世で一番愛しい女性を汚され殺された。
本当のクズはあいつらだ。
妹が殺された以上、報復しなければならない。

「目には目をっ……!歯には歯をっ……!」

その日、彼は鬼になった。
相手が権力者だろうが関係ない。やられたらやり返される。
その世界の常識を不良どもに教えてやらないと気がすまなかった。



まず、彼は鈴木の後をつけ、奴が住むプールつきの豪邸を探し出した。
最初は家ごと放火してやろうと思ったが、番犬がいるわ、警備員がいるわと、セキュティーは完璧だったから計画を変更。
登校中の鈴木を、盗難したトラックでひき殺した。
死因が死因だったから、クラスメイト達は鈴木達にリンチされて殺された同級生の祟りだと思い込み、誰も葛城の犯行だとは思わない。
だが、いずれ警察の捜査の手が伸びてくるのは確実。
その前に残り二人を殺す事にした。


次に佐藤には、税金を納めると言って、旧校舎裏の古井戸の近くに呼び出し、ナイフで滅多刺しにして殺した。
誰も近寄らない旧校舎は、殺害に適していた。
佐藤の遺体と血まみれになった己の学生服を古井戸へと放り込み、蓋をして隠し、ジャージへと着替えた。
だが、これがいけなかった。
携帯のGPS機能で遺体の場所が簡単に判明してしまった。
警察が学校へと立ち入り、綿密な調査が始まっている。
このままだと、明日には葛城は逮捕されるだろう。
だから、その前に田中を殺してやろうと……授業中に背後からナイフで首を刺した。
すぐに警官がやってきた逮捕されてしまったが、田中が泣き叫びながら血を出して死んだのを見て、心の底からホッとできた。




「被告を死刑に処する!」

葛城はすぐに裁判所へと放り込まれ、そこで死刑判決を受けた。
不良三人組を殺した罪どころか、妹の自殺、同級生の死、麻薬取引、銃器密売などの無関係な罪をごっそりと盛られ、世間は彼を最低最悪の犯罪者として取り扱い、絞首刑になった。
だが、後悔はない。
大事な妹の仇を取れた。出来れば不良達の両親も殺してやりたかったが、報復は十分にできて満足できた。
そんな時だ。
彼と鳳凰院博士が巡りあったのは――葛城が死んだ後。
絞首刑でこの世を去った後に真っ暗な空間で出会った。

「素晴らしい!凶悪な犯罪を犯す人材が欲しかったらところだ!
僕の最高の玩具になるぞ!
どうかね?ノーライフ・オンラインに参加しないか!」

葛城が聞いてもいないにも関わらず、博士はペラペラと軽い口調で全てを話していく。
ノーライフ・オンラインが体感型VRMMOなんて事は、嘘っぱち。
実際に作り上げた小さな異世界で、肉体(キャラ)を与えてプレイヤーの魂を込めているだけ。
現実を放棄した廃人プレイヤーの9割が、既に死んでいる人間達。
だから、ゲーム名が『ノーライフ・オンライン』なのだと、笑いながら答えてくれた。

(怖ぇぇぇぇぇ!この男、絶対に人間じゃないっ……!)

神様同然の化物。それが鳳凰院博士の正体だ。
葛城はこういう経緯を経て、エンシェントリッチとなり、ワルキュラの名を名乗って第二の人生を異世界で過ご、デスゲームへと巻き込まれた。
博士は、ノー・オンを作った目的は一切明かさなかったが、このゲームにはきっと何か意味がある。
まず異世界の数は108。
プレイヤーの総人口は108万人ぴったり。
これは仏教での煩悩の数を意味する。
きっと重要な数字なのだろうが、せいせい彼の頭で思いつくのは

(煩悩を取り払って解脱……?
仏教のブッダさんに俺はなる……?)

技術者屋でも、オカルトマニアでもないから、博士が何を目的に行動しているのかさっぱり分からない。


〜〜〜〜〜


ワルキュラの意識は現実へと戻った。
骨の身体だが、不思議と心が高ぶる。

(博士……アンタが何をやりたいのか分からんが……俺は自分が生きるために闘うだけだ)

……このゲームをクリアーしても、地球には戻れない。
既に絞首刑で理不尽な死を迎えたのである。
だが、殺されそうになったら、やり返す。
それが彼の流儀だ。

(苛められて殺されるくらいなら……殺し返してやるっ……!)

そして、今、彼の眼前に勇者が立ちふさがる。
軽装鎧を付け、背丈ほどの大剣を抱えた金髪の美少年だ。激しい憎しみの炎を青い瞳から迸らせている。
職業は軽戦士。スピードを生かして手数で勝負するタイプだ。

「ワルキュラっー!
今日が貴様の命日だぁー!」

ワルキュラは玉座から立ち上がった。
殺意を持って、目の前の虐めっ子を睨みつけ、餓骨杖を振り上げて

「死ぬのは貴様の方だぁー!」

ノーライフ・オンライン。ゲームではないゲーム。
誰も語り継ぐ事のない最終決戦がここに始まろうとしていた。

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