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料理大好きエルフ
3話 百国物語と『普通のオニギリ』 |
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オニギリとは? 単純な料理です。米を丸く握るだけだから、誰でも作れます。
オニギリの人気とは? オニギリの中に具を入れれば、無限のバリエーションが広がるから便利なんです。
ラッキーが作るオニギリとは? やっぱり塩オニギリが一番ですよ。食べたいなら店に来てください。
百国物語という遊びを知っているだろうか?
集まった人間達が、百のロウソクを灯し、架空の国々を面白おかしく話し終える度に火を消して……百国を全て語り終え、最後のロウソクの火を消すと、世にも恐ろしい国が現実に誕生するという怪談遊びである。
ここに、21世紀の『ゆっくりできるブログ』というサイトで大流行した遊びを、やろうとする連中がいた。
深夜の学校の体育館。
真っ暗な闇が支配する空間に、火が灯った百個のロウソク。
百人のエルフ・獣人達が円となり、彼らは物語を始めた。
「では、開催者の私から始めよう」
そう言ったのは銀仮面をつけた仮面皇帝。紅いスーツが明かりのせいで照らされ――怪しい不審人物に見える。
「そう、あれはゾンビだらけの国だった。
天国ウイルス……略してTウィルスという謎のウィルスによって、国中の死体が元気に動き回っていた。
おかげでお爺さん、お婆さん達が何歳になっても元気満々、老人介護施設という物が存在しなくてな。
福祉予算なしで国家経営できるから、とっても発展していたのだ。
……まぁ、問題があるとするならば、腐った死体が歩き回っている訳だから、臭いし、不衛生だから、生きている人間が次々と死んで動き回る死体になる欠点があったな。
最近の噂では、香辛料を身体につける事で匂いをごまかしているそうだ」
語り終えた仮面皇帝は、フゥーと息を吐き、ロウソクの火を消した。
観衆は口々に「それ、この前、訪れた国ですよね」「主催者がルール違反しとるのう」「もっふふー」と感心する。
「次は僕の番ですね。3秒ほどで考えた素晴らしい話をします」
大人しい雰囲気の黄色い機械歩兵が新しい物語を紡いだ。
「僕が訪れた国は、ありとあらゆる人工物・作物が爆発する国です。
高層マンションが大爆発、ホテルに宿泊すれば冷蔵庫が、道路を歩ければマンホールが、そこから避難すれば道路が爆発するという命の危機を覚える酷い酷い国でした。
最初はテロか何か?だと思ったのですが……どうやら国中の人間達が『うっかりヒロイン属性』という呪いの持ち主なのが原因みたいなんです。
一定の確率で製造した道具に、爆発物を混入してありとあらゆる道具が爆発するという、それはそれは酷い国でした。
作物すら爆発したんですよ?
ありえないですよね?
農薬に何を混ぜたら爆発するのか、僕が聞きたいくらいです」
話し終えた黄色い機械歩兵は、機械の手でロウソクを潰して火を消した。
観衆は口々に「現実感がなさすぎてつまらん!」「そんな国がある訳ないのう、リアリティーというものを考えてほしいかの?」と憤慨した。
「次はわっちの番じゃな?」
白いドレスを着た愛らしいエルフ娘が、可愛く首を傾げ、新しい物語を紡いだ。
「わっちが行った国はのう。
変わった風習がある国じゃった。
結婚したい男たちが気に入った女を見かけると……誘拐して監禁してのう。
そのまま無理やり妻にする国だったんじゃよ。
酷いじゃろ?わっちもそう思う。
誘拐されて結婚を強要された女性が、そこから逃げると社会的に迫害されるし最低最悪の国じゃった。
わっちも可愛いから誘拐されそうになってのう。
慌てて逃げたんじゃよ。
可愛いのは罪じゃのう」
エルフの少女は言い終えると、フゥッーと息を吐き、ロウソクの火を消した。
観衆達は「女性の人権が守られてないんですね」「2200歳なロリBAAが言うと迫力があるなぁ」と感想を言い合った。
「やれやれ、私の番か」
青い機械歩兵は、首を360度回転させながら物語を紡いだ。
「私が訪れた国は、人を殺しても良い国さ。
国が腐敗しすぎて法律が機能してなくてね。警察に賄賂を払えば何をやっても許される、異常な国だった。
酔っ払いに友人を1人殺された私は……危険を感じて、慌てて逃げ帰ったよ。
はい、おしまい」
面倒くさそうにそう言った青い機械歩兵は、機械の手でロウソクの先端を握りつぶして火を消した。
観客達は「強化した機械歩兵を殺せる人間なんて居ないだろ!?」「アホかっ!?」「酔っ払いどんな重武装してるんだよ!?」と批判した。
「じゃ、次は僕だね?」
メイド服を着た紅いポニーテールの犬娘が、優雅な笑みを浮かべて……物語を紡いだ。
「僕が訪れた国は、色んな偽物を作る国だよ。
お金も家も宝石も食べ物も、全てが偽物。
偽物を作る事に生きがいを感じる、そういう変な人たちが住む国なんだ。
特に迷惑なのが食べ物まで偽物。
食感は本物そっくりなのに、食べられない物資で作られているから毒同然の存在なんだ。
おかげで、あっちこっちの店でお腹が痛くなって苦しむ人間達が居たよ。
嫌だよね。人生の楽しみの一つが偽物なんてさ。
やっぱり食べ物は本物が一番だよ」
言い終えたメイドさんは、息をフゥーと吐き、火を消した。
観衆達は「ルビーの話はありきたりじゃのう」「2200歳のメイドさんとか可愛い」と感想を言い合った。
それから機械歩兵、エルフ、獣人達は次々と架空の国々を言い、ロウソクの明かりを消していく。
すると……ロウソクの灯りは一つになってしまった。
百国物語。本来はこのような事態にならないために『ゆっくりできるブログ』では、途中で怪談話を切り上げるのが暗黙のルールだった。
もしも怪談が本当なら――世にも恐ろしい国が誕生することを意味する。
最後の語り部は若い青年(約1200最)のエルフ。銀色の髪がロウソクの灯りで照らされて輝いてる。
「よしっ!俺の番だな!
お前らをビビらせてやるぜ!」
彼は怪しい笑みを浮かべ、物語《ファイナル・ファンタジー》を紡いだ。
「俺が訪れた国はな。
可愛い金髪のエルフ娘がいる素敵な国だ。
お茶を入れるのが上手くて、とっても優しい。だが、その娘には問題点があるんだ。
……実は幽霊なんだ。
お茶を飲ませた相手を殺して、自分の物にしようと企む悪い悪い幽霊。
一度でも茶を飲んだら何処まで何処まで追いかけてくる。
退治しようとする退魔師は根こそぎ殺しまくって、やりたい放題で酷いのなんの。
おかげでその幽霊が住む団地は『アン・ラッキー団地』と呼ばれて恐れられていたんだぜ!」
言い終えた青年エルフは、風の精霊魔法を使い、ロウソクの火を消した。体育館は真っ暗闇に包まれる。
皆、何か異変が起きるかも?と身構えた。
しかし待てども待てども、何も起きない。
安心した狐娘はホッとして
「なんだ、何も起きな――」と呟こうとした瞬間。
ガラッ!
体育館の扉が開いた。
そこに金髪のエルフ娘が居た。青いエプロンドレスを着ている。
光の精霊さん達を纏っているから、身体がすごく明るい。
そして左手には大きな大きなポットがあった。そこからお茶の香ばしい匂いがする。
「お茶いりますか?ハーブティーです」
そうエルフの少女が呟いた瞬間、恐怖が場に広がった。
「「「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!憑り殺されるぅぅ!!!」」」」
生身の獣人とエルフ達が逃げ惑う。機械歩兵は首を360度回転して動揺していた。
――怪談は本当だった。
最後まで言い終えたら酷い事になる。
こんな事するべきじゃなかった。
……皆、ここで冷静になった。
怪談で出てくるのは『酷い国』のはず。
エルフの幽霊が出てくる国とか、よく考えたら、ただの怪談じゃん!と気づいた。
皆の視線がエルフの少女に注がれる。
そこに居たのは幼いエルフ娘の『ラッキーちゃん』
少女はニッコリと笑って
「皆さん、ハーブティーいりませんか?
機械歩兵の皆さんには美味しいオイルを用意してますよ?」
皆は、これが主催者側の仕掛けという事に気づき、大笑いした。
ラッキーはそんな皆の姿を見て、心がホッコリする。
「オニギリもありますよ?」
★お後がよろしいようで★
怪談話の客達は、ハーブティー、オニギリ、オイルを貰い、美味しく飲んだ。
1時間ほど楽しく雑談して、あちらこちらへと帰っていく。
最後まで残ったのは、深い悩みを抱える仮面皇帝。後片付けをしているラッキー。
皇帝は恐怖で身体がプルプルと震えている。
「ま、まさか、百国物語は――何かの魔法の儀式だったのだろか?」
この地球出身の皇帝は、アフリカ、アジアなどなど、仕事で行った数々の地域を脳裏で思い出していた。
「皆が語った架空の国。
あれは私の話と最後の話を除いて……98カ国は地球に存在する国々だった。
地球があんなに酷い国々だらけになったのは、ここで怪談話したせいか?
恐ろしい。私はなんて恐ろしい事をしてしまったんだっ……!地球の皆っ……!すまないっ……!」
翌年、百国物語は法律で禁じられ、存在そのものが歴史の闇へと消された。
ラッキーは、仮面皇帝が震えている様を見て、勘違いして首を可愛く傾げながら
「……お祖父様?お腹が空いているんですか?
オニギリ作りすぎて余ってますけど、食べます?」
「……うむ、ラッキー君の好意を受けよう」
仮面皇帝は恐怖から逃れるためにオニギリを手に取る。
最高級のお米と、栄養素が多い塩を使ったオニギリだとすぐわかった。
パクンッ、一口齧る。
――こ、これはっ!うまいっ!うますぎるっ!
水分を少なめにして炊いたご飯を、固く握って作ったオニギリだ。
炊いてすぐ、熱々の状態の米を握ったおかげで保水膜が出来ている。
時間が多少経過しても、オニギリの鮮度が維持され、とても美味しい。
いや、そんな言葉で形容できないほどに……美味いっ!なんで、こんなに美味いんだ!?
オニギリで、人を感動させる孫娘は一体……何者っ……!
どう工夫すればこんな味になる!?
お米と塩が、超一級レストランすらも超えた味に進化しているぞ!
まさかっ……!神か悪魔の類かっ……!
仮面皇帝はラッキーの顔を見た。
そこにいるのは――天使のように純粋な笑みを浮かべた愛らしい少女だ。
少なくとも、邪悪な存在ではない事は確か。
……あと、些細な事だが、視界に映る体育館の風景が、なぜか広大な海の底に変わっていた。
水着を着た狐娘達が「もっふふー!もっふふー!」と楽しくイルカさん達の尻尾に捕まって泳いでいる。
水中ロボット、秋刀魚、イワシ、マグロ、タコ、イカ、サメなどの海洋生物達が仲良く泳ぎ回り、まるで、ここは水族館、いや海の楽園だ。
素晴らしい。素晴らしいぞ。ラッキー君。
料理で海を実現するとは……中々やるな。
「お祖父様……美味しかったですか?」
ほとんど全裸に近い、人魚姫の姿で首を可愛く傾げたラッキー。
胸を隠すのは貝殻のみ。天女のように真っ白な肌が芸術的すぎた。
残ったオニギリは、全て仮面皇帝の胃袋に収まった。
今回のコメントまとめ+ 作者感想
http://suliruku.futene.net/Z_saku_Syousetu/Tyouhen/Erufu_no_isekai_syokudokuraku/c3.html
【小説家になろう】 魚里高校ダンジョン部!、ニ巻で打ち切り
http://suliruku.blogspot.jp/2015/11/blog-post_7.html
【小説家になろう】
BANされたファースト先生の新作『異世界チート開拓記』の評判が悪い件
http://suliruku.blogspot.jp/2015/11/ban.html
審査員(´;ω;`)(´;ω;`)やった……!やっとまともな料理がきたっ!
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