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2国目 愚民の国
 後編  最悪の共産主義の国





ラッキーは、また20年後に思い返したかのように、愚民だらけの国を訪れました。
共産主義を推進した国がどんな結末になったのか気になったのです。
今回は不法入国する必要すらありません。
国が死に絶えています。
建物はあちこちがボロボロを通り越して倒壊していました。
城門も城壁も補修されずに壊れています。
ラッキーは正々堂々と壊れた城門を通って入国し、街の大きな広場へと向かいました。
道中、生きている人間を全く見かけません。
動かない白骨死体だらけです。
広場に到達すると、そこには辺り一面に膨大な数の頭蓋骨が並んでいて、年老いてヨボヨボの軍人さんが頭蓋骨の上に座っています。
絶望して下を見てブツブツと呟いていました。

「なぜ……なぜ……こうなる……
皆死んだ……」

「軍人さん。どうしてこんな国になったの?」

ラッキーは、問答無用で知的好奇心を満たすために、軍人さんに話しかけました。
軍人さんは、若い女の子が目の前にいる事に驚きます。

「こ、この国の生き残りか!?」

「違う。
私は通りすがりのエルフの旅人だよ」

「……そうか。
生き残りじゃないのか」

「どうして、この国が死に絶えたのかを私に教えてほしいの」

ラッキーは、容赦ありません。
目をキラキラと輝かせています。
共産主義といえども、ここまで酷い終わり方をする国はそうはないからです。
大抵。国民の何割かが死ぬくらいの被害で済みます。
軍人さんは、寂しさを紛らわすためにも、ラッキーに全てを話そうとしました。

「・・・この国はな。
20年ほど共産主義という、全ての富を平等に分け与える体制で暮らしていたんだ。
給料も食糧も平等に分配して、理想の公平な社会を実現して・・・いたんだ。
だが、働く者にも、働かない者にも、平等に給料を支給したから、皆が働かなくなった」

「そ、か。
他の共産主義国家よりも酷いね。
まさか働かない連中にまで、賃金を払うなんて・・・クスクスクス」

ラッキーは大笑いしました。
笑い死にそうになるほど笑いました。
軍人さんは、今までずっと寂しかったので話を続けます。

「でも、俺はそれでも共産主義が正しいと思って頑張った。
皆が、この制度の素晴らしさに気付いてくれれば、働く尊さに気付いて、平等で素晴らしい国になると思って、俺達は共産主義を続けたんだ」

「クスクスクス。」

「ラッキー、笑うのやめようよ。不謹慎だよ」

「国民の中には、民主主義に戻った方が言いとか、時代を逆行させるような発言をする奴らも居たから、俺達はそんな反逆者達を全員、石投げの刑で処刑して、共産主義のために頑張ったんだ。
だけど、反逆者を殺しても殺しても、反逆者は減る事はなかった。
皆、共産主義の素晴らしさに気づかない愚民だったから、全部俺達が殺した。
挙句の果てには、軍部の中からも民主主義の方が良いとか、ふざけた発言をする奴が出て、そいつらも俺達は全員殺した!」

ラッキーは笑います。
普通の共産主義国家なら、人間には実現不可能な平等社会を実現しようとする矛盾故に、大量虐殺をしまくる専制主義寄りの国家になったり、他国に攻め込まれて政権が崩壊して、事態は収拾されるのですが、この国は予想外の事ばかり。
これには笑うしかありません。

「だがっ!
反逆者を次々と殺していたら、とうとう軍の中から離反者が出続けたんだ!
そのまま軍が複数に分裂したせいで、この国は10年以上内紛を続けて、今じゃ国は廃墟!
無事な国民や俺の同僚達は、この国を見捨てて逃げて、今じゃ、俺しか残ってない!
なぜだ!
なぜなんだ!
理想の共産主義社会を作るつもりだったのに!
なんでこんな事になる!」

ラッキーは笑うのをやめました。
見事な結末を見せてくれたお礼に、軍人さんに答えてあげます。

「軍人さん。
あなたは、長く生きたはずなのに、人間の欲望の深さに気付かなかったの?」

「なにを……言っている?」

「働く者も、働かない者も、病む者も、無能な者も、有能な者も平等に公平に富を配分する社会なんて実現できると思っていたの?軍人さん。
私はこの数十年、人間を見てきたから知っている。
人間は、そんな環境では腐ってしまう生き物だよ」

軍人さんは大きく動揺しました。
ラッキーは、笑みを浮かべながら言葉を続けます。

「人間はたくさん働けば、その働いた分だけのお金や物が欲しいしと思ってしまう生き物なんだよ。
それなのに、幾ら働いても平等に給料を払ったら、皆、働くのが馬鹿らしくなってやめてしまうのは当たり前だよ。
そんな事も軍人さんは分からなかったの?
人間の一生は短いけど、それなりに生きてきたはずでしょ?」

「違う!
人間はもっと!
進歩するはずなんだ!
反対する奴らを全員殺せば、平等な共産主義社会が実現するはずだったんだ!
俺は悪くねぇー!」

軍人さんは頭を抱えて首を左右に必死に振り、理解するのを拒みました。
ラッキーの言葉を素直に聞く事は、今までの全人生を否定した事になるからです。
ラッキーは、これ以上は何を言っても無駄だと思ったので、光学迷彩で姿を消し、場から歩いて離れました。
場に残されたのは、ヨボヨボの軍人さんと、死の国と化した元人間の国です。

「俺は・・・俺は・・・・悪くな・・・・・・・・・・うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」












ラッキーが軍人さんの国から離れて、次の国へと向かうために歩いてると、背後から銃声が響きました。

パーン

この銃声が誰に向けられたものかはラッキーには推測しか出来ませんでしたが、恐らく、軍人さんは自殺したのだろうと思っています。
人間の世界は、理不尽と矛盾で満ち溢れて、とても醜いとラッキーは思いました。
そして、だからこそ、人間の世界は楽しい。
今日のラッキーは笑顔でした。





「」
妖精さんは、ラッキーの鬼畜っぷりに今回は何も言えません。






2国目 最悪の民主主義と、最悪の専制政治と、最悪の共産主義の国
おしまい










あとがき
【ヤンが最悪の民主政治は、 最良の独裁政治に勝るって言ってたけど本当なの?】
http://suliruku.futene.net/uratop/Dai/Ginga_Eiyuu_Densetu/Z_52.html
を思い出したから、このネタ思いついた。
 
最悪の民主政治  +  最良の独裁政治

最悪の民主主義 + 最悪の専制主義 + オチに最悪の共産主義

俺は悪くねぇー! 





 

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