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ラッキーの不思議な旅



27国外目 宝石サンゴ密漁事件

 

ラッキーが人口13億ほどの大国【チャイナヤー国】の福建省と呼ばれる地方の街を歩いていました。
この街の浜辺には錆びてボロボロになった漁船がたくさん止めてあり、漁船から紅いサンゴが次々と運び出され市場へと運ばれて行きます。
気になったラッキーは、近くにいた漁師の1人に声をかけました。
その漁師は皮膚が黒く焼けていて格好良い中年です。過去にジャパンヤー国の海上保安庁に密漁の罪で逮捕されても、現在も平然と密漁をやっているタフな精神の持ち主でもありました。

「ねぇねぇ、その紅いサンゴなーに?」

「ん?
小さいお嬢さんは外国の人か?
これはな。
宝石サンゴっていう植物だよ」

「宝石サンゴ?聞いた事がない植物だけど海から取れるの?」

「宝石サンゴは深海に生息している植物だ。
正確に言うなら、花虫綱八方サンゴ亜綱ヤギ目サンゴ科の植物だな。
1年に0.3mmしか成長しないし、今まで乱獲しすぎたから全人代常務委員会が宝石サンゴを取る事を2010年に禁止した影響で、(賄賂や隠し資産としても使えるから)価格が高騰して、今じゃ1kg280万円で取引されて宝石のように貴重な植物なんだ。
特にこの国では赤は幸福の象徴だから、赤いサンゴは1kg600万円で売れる。
場所によっては1g15万円で買い取ってくれる所もあるんだ。」

その言葉に、ラッキーは首を可愛く傾げました。

「?
取るのが禁止なのに、なんでここに宝石サンゴがあるの?
密漁かな?かな?」

「そりゃ、これはジャパンヤー国の領海から密漁してきた違法品で、(闇市に売るから)大丈夫なんだよ。
取るのを禁止しているのは自国内だけだからな。
頑張って働けば10億円や20億円を簡単に稼げるから上手い商売だぜ。
今は小笠原諸島らへんが警戒が手薄で、宝石サンゴが豊富だから取り放題なんだ。
じゃ、俺は忙しいから小さいお嬢さん。用があるならまた後でな。」

「うん、ありがとう。」

漁師は宝石サンゴを持って、何処かへと行きました。
ラッキーは、頭に乗っている妖精さんを見上げながら呟きます。

「たまには労働するのも悪くないよね?」

「ラッキー、密漁は犯罪だからね!?
やめようよ!」

妖精さんがラッキーを止めようとしましたが、それを無視し、ラッキーはジャパンヤー国の小笠原諸島の方角へと、空をビューンと魔法を使って飛びました。
立ち去った後、庶民からの通報で、この漁師さんは漁政当局に逮捕されて、海にある闇市で赤サンゴ売れば良かったと後悔しました。
実際に取ったのは他国のサンゴでも、そのサンゴが自国のか、他国のものなのか分からないから、見つかったら逮捕されちゃいます。

 

 

 

 


小笠原諸島。
それはジャパンヤー国の東京都特別区の南南東約1,000kmの太平洋上にある30余の島々。
その中の一つ硫黄島には、海上自衛隊の硫黄島航空基地隊と、航空自衛隊の硫黄島基地隊が駐留していて発見されたらややこしい事になるので、そこからかなり離れた場所の深い深い海底をラッキーは歩いていました。
空気は風のバリアーから補給すれば無問題。
普通の人間なら潰れて死んじゃう水圧の場所ですが、風のバリアーと魔法があればへっちゃらです。
トコトコ海底を歩くと、宝石サンゴが見えてきました。
紅くて綺麗な枝がたくさんある植物です。
紅ければ紅いほど高い値で取引され、チャイナヤー国ではアクセサリーや像に加工され、アクセサリーなら80〜100万円くらい、像なら1100万〜2000万ほどで取引されるのが一般的なので、これを持ち帰れば大儲け間違いなし。
紅い宝石サンゴに近付き、風の刃を纏った手刀でシュパシュパと切断。
次々と何でも物が無限に入る異次元ポケットに、宝石サンゴを入れ、その作業を繰り返します。

「ちょろい仕事だよ。
1時間も働けば、5億円くらい稼げそう。」

満面の笑みをラッキーは浮かべました。
でも、視界の端に可笑しい物体を見かけます。
青い網です。
端の方に石を括りつけてあり、海流任せに海底を引きずるように移動して、海底の環境を根こそぎ破壊しながら迫ってきました。

「?
なんだろう?あれ?」

「ラッキー。
あれ、漁師が使う道具だよ」

そのまま青い網はラッキーの所までやってきました。
どうやら宝石サンゴを取るのが目的のようですが、この網は途中にあったジャパンヤー国の漁師が仕掛けた漁具を壊したり、海底の環境を破壊しすぎて、自然環境を守る気が全くありません。
ラッキーと青い網がぶつかり、風のバリアーが網を巻き込んでバラバラに切断。
海上でこの網を海底に向けて垂らしていたチャイナヤー国の漁船も巻き込まれて沈没しました。
乗っていた漁師達は魚の餌です。
自然環境を破壊した報いという奴なのかもしれません。

 

 

 

10時間も経過した頃には、ラッキーの異次元ポケットの中に50億円相当の宝石サンゴが入っています。(日本の2014年度の宝石サンゴの市場規模に等しい額)
これ以上の大金は必要ないので、ラッキーは真っ直ぐ海上へと向けて魔法で強引に移動しました。
普通の人間なら、急激な水圧の変化で身体がバラバラになってしまいますが、魔法と風のバリアーがあるから大丈夫なのです。
どんどん太陽に反射されて光っている海面に近付くと、膨大な数のボロボロの船が海上に浮かんでいる光景が見えます。

「?
今日は漁が盛んな日なのかな?」

誰にも見られないようにするために、ラッキーは光を歪める光学迷彩を展開して、そのまま海から飛び出て空中に浮きました。
チラリと海の方を見ると、そこには200隻以上のチャイナヤー国籍漁船が違法操業をしている姿が見えます。
どれもこれも網を100m先の深海へと向けて垂らして、宝石サンゴを密漁しようと頑張る漁師さんです。

「壮観だねぇ」

ここにいる皆が一攫千金を夢見る荒くれ者達です。
チャイナヤー国の領海でサンゴを密漁すると、犯罪者として社会的な制裁を受けるから、捕まってもリスクが低いジャパンヤー国の海を荒らしまわり、海底の自然環境を網で根こそぎ大破壊。
近くにジャパンヤー国の海上保安庁の巡視艇がありましたが、その数はたった5隻。
捕まえるにせよ、追い払うにせよ、絶望的なほどに数が足りません。
仮に、違法操業している漁船を拿捕して船長達を逮捕した場合、陸地の横浜まで連行する必要があり、片道だけで4-5日の時間を浪費し、その間、巡視艇が海上の警備を出来ないから余計にサンゴを密漁されてしまう悪循環になるのです。
だから、海上保安庁の巡視艇は、違法操業をさせないように追い払う事を優先していました。

 

 

 


「ヒャッハハハハ!この海は今月から俺らの海だぁー!
お前らに漁はさせないぞ!
長崎、鹿児島、沖縄と違って、ここらへんは警戒が手薄だなぁー!
取り放題だぁー!
わざわざ遠くまで密漁しに来た意味があるぜ!」

遠くではジャパンヤー国の漁船が、チャイナヤー国の漁船に後ろから追跡される嫌がらせをされて大変です。
チャイナヤー国から遠く離れた小笠原諸島まで来れる違法漁船は、大きい船ばかり。
具体的な大きさは 鋼鉄製で100トン以上の船です。
それに対し、ジャパンヤー国の漁船は10 トン未満のグラスファイバー製。
戦車と自転車くらいの差があります。
もしも、チャイナヤー国の漁船と衝突したら、ジャパンヤー国の漁船の人達は転覆して死にます。
ラッキーは呑気そうにこれらの光景を見ながら、ゆっくりと空の旅をしました。

「うーん、荒んだ海だねぇ。
これどう思う?妖精さん?」

「……なんで、仲良くできないのかな?
僕、人間を見ると疲れるよ……」

「それは仕方ないよ、妖精さん。
資源は有限だから、そんな事を言って無料でプレゼントしていたら、全部奪われて犯されて殺されて死んじゃうのが人間の世界だよ?
今はまだ、お互いに兵器を使ってないし、マシな方なんじゃないかな?」

チャイナヤー国は、堂々と宝石サンゴを次々と取り、海底の自然環境を破壊しまくりながら大喜びです。
魚さん達が住める環境がどんどん壊れて、ジャパンヤー国の漁師達は悔しい思いで、チャイナヤー国人が乗る漁船を睨んでいました。
宝石サンゴは宝石そのもの、億万長者への近道。
金に目が眩んで、長年守られてきた資源が破壊されてゆきます。
チャイナヤー国の富裕層達の贅沢のために、小笠原諸島の漁師達の今までの努力がパァーです。
このままでは、他の海のように赤サンゴが枯渇して生態系が壊滅する事間違いなし。


@サンゴごと自然環境をぶっ壊す

A小魚(´・ω・`)餌のプランクトンさんは何処にいるの?

B魚が産卵場所を失う。

C宝石サンゴは50年で1cmしか成長しない貴重な珊瑚。

D海底ごと網でかっさらうから、新しいサンゴが生えてこない。

チャイナヤー国の人達は網で引き上げた1000万円相当の宝石サンゴを手に持ち、高笑いをしながら、ペットボトルやインスタントラーメンの袋などを海に投げ捨てました。
後に小笠原諸島に住む地元の人達が、浜辺に流れ着いたゴミを回収しないといけなくなって大迷惑なのです。

 

 

 

 

ラッキーは小笠原諸島で、人が住んでいる島を見つけたから、そこに降りました。
島の住民は、チャイナヤー国の人達を恐れて、子供達だけで浜辺で遊ばないように注意しています。
黄色人種が中心の島なので、白人にしか見えないラッキーは、島の住民から珍しい動物を見るような目で見られて目立ちました。
ラッキーはそれを気にせずにトコトコ歩き、宿泊できそうな宿を探します。
その道中、困った顔で海にあるチャイナヤー国の漁船を見ている男達を居たので、ラッキーは知的好奇心を満たそうと声をかけました。

「ねぇねぇ、あの違法操業している漁船を見てどう思うの?
どうして、何もしないの?」

男達の中の1人が答えてくれました。
どうやら漁師のようです。

「小さいお嬢ちゃん。
俺はこの島で30年も漁で生計をたててきた男だ。
そりゃ、怒っているに決まっている。
でもな、あいつらは200隻以上の大軍でここまで来たんだ。
漁船のサイズも大きいし、俺達じゃどうにもなんねぇ。
しかも、近付くだけで奴らは俺達を脅してくる」

「うーん?
でも、あの漁船達がやっているサンゴ漁って、海底の資源を根こそぎ掻っ攫う破壊的な漁だよね?
このまま放置したら、魚が減ってあなた達は暮らしていけなくなるよ?
それでもいいの?」

ラッキーも、サンゴ密漁をした張本人です。
でも、サンゴは20〜30年ほど再生するから、ラッキーの時間感覚的にはあっという間なので、罪の意識が皆無でした。
漁師さんは辛そうな顔で黙った後にゆっくりと答えてくれました。

「……小さいお嬢さん。
仮に俺達がチャイナヤー国の漁船に攻撃を仕掛けて撃退したとしよう。
その場合、どうなるか理解できるか?」

「報復が怖いのかな?」

「ああ、そうだ。
奴らは絶対やり返してくる。
俺達が武力を使って攻撃したら、海のあちこちで凄惨な殺し合いになって、漁どころじゃなくなる。
こういうのは警察や軍の専門家達に任せた方が良いんだ」

「まぁ、確かにそうだよね。
あなた達の船は小さいし、殺し合いになったら体当たりされるだけで死んじゃうよね」

ラッキーのこの言い方のせいで、漁師さんは悔しそうな顔をしています。
海の遥か向こうでは、宝石サンゴを取るために、海底の形状そのものが破壊され、チャイナヤー国の人達が赤サンゴを片手に幸福そうに叫んでいました。

「一カ月で3億円!
なんてぼろい商売だ!
ひゃっははははは!」

ジャパンヤー国の法律上、密漁の現行犯じゃないと密漁者を逮捕できず、これだけ膨大な数の漁船を拿捕するのも困難な上に、サンゴを積んでいない囮の漁船があるから解決が困難でした。
現行犯じゃないと苦労して捕まえても釈放しないといけません。

 

小笠原周辺はメカジキの好漁場で、メカジキだけで年収2000万円の人がいるから、歴史的にサンゴを大規模に取る必要がなく、原初の海がそのまま残っているおかげで、宝石サンゴがたくさんあります。
そのサンゴが守られるか否かは、ジャパンヤー国政府の手腕に全てがかかっていました。
ラッキーは、手軽に大金を稼げる手段を得て幸せです。

そして、最後の最後までサンゴが植物ではなく、動物の仲間であることに気づきませんでした。
サンゴは石みたいな生き物ですが、クラゲやイソギンチャクの仲間に分類される刺胞(しほう)動物の一種なのです。
でも、共生する褐虫藻といわれる藻類が光合成を行うので、サンゴには海を浄化する働き、天然の防波堤などの機能を持ち、地形そのものをサンゴで作り上げているのえ海の自然環境に欠かせません。

おしまい。

 

 


テーマ【現実のサンゴ密漁事件】

ここから先は、可能性としてあり得る未来を書いた没ネタ。

 


その後もサンゴを取り尽くすまで密漁は続き、何百隻という漁船がチームを組み、海底そのものを網で掻っ攫って破壊尽くし、魚達の住処が失われたから、魚で生計を立てる小笠原諸島の漁師さん達の何割かが失業しました。
ジャパンヤー国側も、取り締まりを強化しましたが、罰金(1000万円)よりも利益(1億円)の方が遥かに大きいため、逮捕されて釈放された後もサンゴ密漁のために、チャイナヤー国の漁船がやってきます。
いえ、これはもう密漁でありません。
200隻以上の大軍が堂々と、違法操業をやっていくので、密漁を通り越した何かでした。
ラッキーもこの騒動で大儲けです。






 

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 ●ラッキーが初めて仕事をする。宝石サンゴ密漁ある!

●風のバリアーを器用に展開して、海底を散歩。宝石サンゴを水の刃で切断して、大儲け

●おや、中国漁船が200隻以上も入ってきて、宝石サンゴが壊滅状態だ!

●日本の漁師とその家族がおおなき


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