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008「人類絶滅政策-4」 |
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しばらくすると、デスリーダーの授業が始まった。
骸骨達はおとなしく座り、田舎っぽい骸骨だけ嬉しそうにバケツを持って立っていた。
「まず言っておこうっ……!
貴様らは労働者以前のクズだっ……!
自分の人生を自分で諦めたクズっ……!
だがっ……!ワシは前途ある骸骨達に優しいっ……!
更生して自立する機会をくれてやるっ……!
さぁ、文句がある奴はワシに質問しろっ……!自分の意志を持ち判断する事が社会人の条件だっ……!」
そう言われたから、スパイスは骨の手を上げてみた。
そんなに酷い場所ではないと思ったからである。
「そこのお前っ……!ワシに質問があるのかっ……!」
「俺はこの国の民じゃないのだが」
「この地で自殺した者はっ……!強制的に自殺税を払わされるっ……!
他国人であろうとっ……!そんな事は関係ないのだっ……!
死んだらワルキュラ様の眷属となるのが定めっ……!質問はして良いがっ……!異論は認めないっ……!」
「じ、自殺税っ?」
途端に、不安な気持ちになったスパイス。税金といえば、商人から盗賊のように財産を奪い取る厄介なシステムだ。
可能な限り払いたくない。商売の神だって『汝、脱税せよ、THE海外で税金逃れ』と言っておられる。
「他国人であるお前に説明しておこうっ……!
自殺税とはっ……!文字通り、自殺したら発生する罰金だっ……!
人間やエルフに転生したいならっ……!
まずは、一億アヘンの罰金を精算しなければならないっ……!
まぁっ……!貧弱な人間に戻ろうとする奴は一人も居ないがなっ……!
なにせ、人間への転生料金は一兆アヘンだっ……!
エルフに転生する事をオススメするっ……!くっかかかかかっ……!」
破産する前のスパイスなら、一億アヘンは余裕で辛うじて払える金額だ。
だが、今は無一文。
あるのはカルシウムたっぷりの骨だけ。
(なるほど……この国では、そういうシステムになっているのか……。
確かエルフへの転生料金が十億アヘンだったな……先が遠すぎる……)
「質問は終わったかっ……?
ならば、最初の試練を与えるっ……!
職業訓練学校を三ヶ月以内に卒業しろっ……!
卒業できなかったりっ……!就職先を見つける事ができなかったらっ……!
どうなるか分かっているだろうなっ……!」
ドスが効いた怖い声色。
スパイスでも容易くどうなるのか想像できた。
(これは恐らくは、自殺者への救済策。
だが、無能な奴らは、魂を貪り食われるに違いないっ……。
ワルキュラの評判的に考えて、酷い事になりそうだ。
商売の神よ。我の未来に幸福と、金銀財宝をくれ……)
ワルキュラ本人が聞いたら『魂を食べるのは冗談だぞ!』と叫びたくなるような事を考えていると、生徒の一人がざわめいた。
「卒業できなかったら……どうなるんですか?」
「質問タイムは終わりだっ……と言いたいが答えてやろうっ……!
一億アヘンの借金に、年1%の利子が付くようになるっ……!
そしてっ……!人間の小学校に入学してもらうっ……!
もちろん小学一年生からだっ……!
貴様は友達百人出来るかなっ……!くっかかかかかかっ……!」
恐ろしい酷すぎる罰。
大勢の骸骨達がデスリーダーの非道さに驚愕し、この地は悪辣なる邪神が支配する場所だと理解した。
「ひぃぃぃぃぃぃぃ!!!」「鬼、悪魔、ワルキュラっ!」
「この外見で小学一年生!?」「やはり邪神の手下だっ……!」
「ワルキュラ様は社会的な意味で、敗者を殺すつもりだっ……!」
「骸骨って太陽光に弱いから、絶対、子供達に虐め殺されるっ!?」
しかし、骸骨達の動揺を他所に、この国の民ではないスパイスには、学校に通う事が罰になるとは理解できなかった。
(学校か……富裕層しか行く事が許されない場所だろっ……?
俺は十二歳の頃に、香辛料を運搬するキャラバンで働いていたからっ……逆に入学してみたい。
商売人として独り立ちした時、知識が足りなくて何度困った事か……)
この選択肢の問題点は、一億アヘンの借金に利子が付く事。
返済不可能な額へと膨れ上がったら、酷い人生を歩む事になる。
さすがにそれは嫌だった。
商売の神も『借金は太陽より重い』と言う格言を残しておられる。
それに、今回、自殺に追い込まれた事で商人という商売が、如何に浮き沈みの激しい仕事なのか理解してしまっただけに、今度は別の人生を歩んでみたい。
スパイスはそう思った。
「キサマらにある選択肢は二つに一つだっ……!
職業訓練学校を出て働くかっ……!それともたくさん働くかっ……!
そのどちらしかないっ……!
骸骨の体は素晴らしいぞっ……!病気になる事も老いる事もないっ……!
これだけで一億アヘンっ……いや一兆アヘンの価値があるっ……!」
そう言ってデスリーダーは指をパチンッと鳴らした。
何もない空間から虫が出てくる。
それは大型のハチに似た危険な虫だ。
「うわぁぁぁぁ!グール・スズメバチだぁぁぁぁぁ!!」
「刺されたら死んじゃう!」「た、助けてぇー!」
慌てた骸骨達は、椅子やバケツを放り出して逃げ惑う。
スズメバチは、お尻に付いた針で、人間すら仕留める事ができる獰猛な虫だ。
日本でも、年間十人ほどお亡くなりになられる。統計学的に言えばクマ、ヘビよりも危険なクリーチャーだ。
「くかかかかかかっ……!
骸骨の身体の利点はっ……!虫に刺されても平気という事にあるっ……!
ジャングル地帯で生活してもっ……!虫が鬱陶しくないのだっ……!
蚊も寄ってこないっ……!ダニも寄ってこないっ……!
さらにアヘン紙幣を貯めて、経験値を購入すればっ……!
このような事も容易いっ……!」
デスリーダーは、右手で割り箸を持ち、空を飛ぶスズメバチを次々と叩いて虐殺した。
それはまさに、外見によく似合う悪辣なる一方的な虐殺。
スズメバチ達は、勇敢にも、デスリーダーへと攻撃を仕掛ける。
だが、丈夫な骨には1mmも針が通らない。
哀れなスズメバチ達はそのまま撲殺されて皆殺しにされ、広場の床へと転がった。
物言わぬ虫の複眼が、広場の骸骨達を見つめている。
虫嫌い現代人な骨達は、畏怖の感情をデスリーダーに抱いた。
「この地下都市ではっ……!
アヘン紙幣が物を言うっ……!
身体能力が欲しければっ……!肉体を強化すれば良いっ……!
肉の体が欲しいならっ……!転生すれば良いっ……!
エッチィ事をしたいならっ……!魔法を覚えて変身すれば良いっ……!
労働が貴様らを自由にするのだっ……!」
誰もそれ以上、デスリーダーにツッコミを入れる事はできなかった。
スパイスは、スズメバチを虐殺したデスリーダーを見て
(なんだよ、この茶番……故郷に帰りてぇ……)
常識の違いという奴に疲れていた。
「貴様らに仕事とはっ……何かを教えてやるっ……!
仕事は社会の隙間を埋める事と言っても……過言ではないっ……!
その隙間が広ければ広いほどっ……!大勢の人間が働く事ができるっ……!
希少な隙間であればあるほどっ……!リターンは大きいのだっ……!
この地下都市の大きな隙間はっ……!何かわかるかっ……?」
デスリーダーは骨の右手で、、スパイスを指し示した。
問われた彼は、商人らしく知恵を振り絞った。
(いや、この都市の隙間と言われても、他国人の俺には分からない事だらけなのだが。
この都市が何のために作られたかのか分かれば、労働市場の需要と供給が読めるな……)
スパイスが考え込んで、返答しないから、焦れたデスリーダーが苛立ち紛れに
「そういえばっ……!貴様は他国の人間だったなっ……!
ならばヒントをくれてやるっ……!
この地下都市はっ……!失業者対策のために作られた地下都市だがっ……!
他にも目的があるのだっ……!
さて、それは何だろうなっ……!くっかかかかかっ……!」
「ちょっと待て!
失業者対策のために、地下に都市を作ったのかっ!?」
「うむっ……!その疑問は他国人から見れば当然だろうっ……!
一応っ……!最初は失業者を集めてピラミッド建設をしていたのだがっ……!
作りすぎると観光資源の価値が低くなるとっ……!観光業界から文句を言われてなっ……!
表向きはっ……!数億年に一度やってくる大絶滅時代に対処するためにっ……!
地下に都市を建造しているっ……!という事になっているっ……!
ワルキュラ様も嘆いておられたっ……!」
「こ、答えを自分の口で、全部言いやがった……!」
「だが、分かっただろうっ……!
社会の大きな隙間とやらがっ……!」
「公共事業?」
「そうだっ……!
これは公共事業っ……!失業する事もないっ……!
労働者の理想郷だっ……!安心して仕事に専念できるっ……!
ただしっ……!国家予算に限りがあるからっ……!
建設工事以外にも、民間の仕事はたくさん用意されているっ……!
おかげで、この地下都市では、失業者は辛うじてゼロっ……!
さぁ、皆の者っ……!拍手っ……!拍手するのだっ……!
毎朝っ……!ワルキュラ様のおかげで生活できる事を、心から誠意を持って拍手っ……!
死の支配者に栄光あれっ……!」
カンカンっ……。
骸骨達は骨の手で拍手した。肉がないから煩い音だった。
「これで貴様らもワルキュラ様の眷属だっ……!
地底の天国へようこそっ……!
ウェルカム ツー アンダーグラウンドっ……!」
こうして、骸骨達は、労働者になった。
たくさん稼ぎたい骸骨は、民間の会社に就職し、激務高給人生。
のんびりゆっくり、余暇を楽しみたい骸骨は、一日3時間労働な都市拡張工事に携わった。
(……俺、エルフになって、ビールと酒のツマミを飲んでゆっくりするんだ)
スパイスは時間の流れすら忘れ、激務な労働に勤しむ。
いつか……労働者から、経営者にクラスチェンジする日を夢見て。
商売の神も、こう言っておられた。
『汗水垂らして働く商人は三流。利益が少ない
一流の商人は、自身は動かずに市場を動かして大儲けする。
超一流の商人は、美術館の中に家がある事がスタートライン』
〜〜〜〜〜
スパイスが、骸骨になって第二の人生を歩んでいた頃。
ワルキュラは、世界征服一歩手前の状況に置かれていた。
説明としてはかなり不自然だが、本人にそのような野望はないのだから仕方ない。
「世界の命運を似合う諸君らに提案がある。
画期的な失業者政策があるのだ」
※異世界内政E〜蛇口を発明したパルメ(´・ω・`)〜
庶民(ノ゚ω゚)ノ(ノ゚ω゚)すげぇぇぇぇ!!パルメの家の蛇口すげぇぇぇ!!
ひねるだけで、水が出てくるっ!
この蛇口貰うわ!
パルメ(´・ω・`)うわっ!やめろーっ!
↓
庶民(ノ゚ω゚)ノ(ノ゚ω゚) おいっ!俺達の家に蛇口つけたけど、水が出ないぞ!
この詐欺師めっ!
家をぶっ壊しやる!殺してやる!
パルメ(´・ω・`)主人公補正がないから辛いどん
※ノンフィクション
今回のコメントまとめ+ 小ネタの感想まとめ
http://suliruku.futene.net/Z_saku_Syousetu/Tyouhen/Dakara_isekai/c8.html
【小説家になろう】
「中央集権国家がチートすぎて、改革が大変だって!?」
http://suliruku.blogspot.jp/2016/03/blog-post_58.html
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