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ドラゴン転生  
19話「ガチャガチャの国」A 8KB 

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リリーの家に宿泊した後、私は超高級ガチャガチャがある公園へと、アイスと一緒に飛んで向かっていた。
そこは裕福そうな人間達が列をなしていて……金髪の美男子ラインが、未だに金貨をガチャンガチャンッと入れまくって超高級ガチャガチャをやっている。
周りには、ラインの部下と思しき黒い軍服を着た部下達が、ガチャガチャから出た景品をトラックに運び込み、少し離れた場所にある球形構造のオークション会場へと景品を輸送して――

「おおーい!?
よく見たら、この超高級ガチャガチャって徹底的に金を搾り取る設備じゃないか!?
「ドラさん?
どういう事なの?」

私はビルサイズの超高級ガチャガチャとオークション会場を交互に指し示して

「超高級ガチャガチャで出た要らない景品を、オークション会場で売りさばいて……そのお金で超高級ガチャガチャを金が尽きるまで無限にやらせるシステムになってるんだ!アイス!」
「わぁー、さすがリリーだねー。
えげつないよー」
「お客の財布が空っぽになるまで吸い尽くすとか鬼畜すぎるだろ……」

本当にラインが哀れだ。
彼は憔悴しきった顔でガチャガチャのハンドルを回している。

「何故だ……何故、万能治療薬がでない……っ!くそぉー!
妻を助けるために薬がいるのだ!
出ろぉー!」

金貨1枚入れてハンドルを回して出たのは――リリーのプロマイド写真100枚セットだった。
ピンクと白の縞々パンツしか履いてない下着姿や、着物、スクール水着、猫耳メイドなどなど色んな需要に答えた写真がある。
銀髪ロリエルフのコスプレ写真……きっと、価値があるな。間違いない。
欲しくなってきた。この話のサブタイトルを『ロリコンの国』にすべきだと思った。
私は気になって、次々とハンドルを回して出てくる景品の数々を見てみたら――
@米100kg。
Aアイドルのプロマイド写真100枚セット
B洗剤10年分
C避妊具10万人分
うーむ、見事にどこかの企業の在庫品だ。
オークション会場に出しても、買い叩かれそうだ。
…おっと、見ている間にラインの金貨が底をついた。
彼はコンクリートの地面に何度も何度も――殴りつけて悔しそうにしている。

「くそったれぇー!
またあの長い列に並び直さないといけないのか!?
妻には時間がないのに!くそぉー!」

そのラインの片手には、紅く輝く、拳サイズの国宝ルビーが握られていた。
お、当たり景品だ!
怒りで我を忘れたラインは、その当たり景品を地面に叩きつけようとして――

「貴重品を粗末にするなぁー!」
「パピフホっ!」

私は思いっきりラインの顔を蹴って、国宝ルビーを奪った。
こいつの胸ぐらを掴んで説教する。

「お前は妻を助けたいんだろう!?
その国宝ルビーを売れば、超高級ガチャガチャをする資金になるだろう!?
物を粗末にするな!」
「……あ、ああ、その通りだった。
済まない妖精の少女。
でも、オークション会場でルビーを売っている間、俺はこの列から離れてしまうだろう?
それだけは避けないといけないんだ!」
「並び直せよ!?アホか!」
「いや、列の先頭の人と交代してもらう料金相場が金貨1万枚なんだ!
俺は1年間並んでようやくここまで来た!
このチャンスを逃したら……妻が死んでしまう!」
「長すぎる!?どうしてそうなった!?」
「俺みたいに金貨を万単位で用意して挑む奴らがたくさんいるせいで、行列が全く進まないのだ!妖精の少女よ!」
「リリーは少しはお客さんの事を考えて超高級ガチャガチャを運用しろよ!」

なんて事だ。
この超高級ガチャガチの景品が豪華すぎて、ラインみたいな奴が何日もかけてガチャガチャやるせいで、待ち時間が長すぎるとか……酷すぎるだろ!?
こうなったら、仕方ない。
今日は当たり景品が出やすい日だし、私がやってやる!やってやるぞー!

「ライン交代しろ!
代わりに私が超高級ガチャガチャをやってやる!
万能治療薬が出たら、この国宝ルビーと交換してくれ!」
「え?妖精さんは金貨を何枚持っているんだ!?
金貨2万枚使って、ようやく当たり景品が一つ出る難易度なんだぞ!?」

ラインがそう言ったから、私は隣でゆっくりしているアイスに――頭を下げて頼み込んだ。

「アイス!
一生のお願いだ!
金貨を貸してくれ!」
「ドラさん、ギャンブルは良くないよー?
破滅フラグだから嫌だなー」
「(リリーと共謀してインチキしているから)大丈夫だ!
アイスが信じる私を信じろ!」
「あ、懐かしい言葉だね。
僕とドラさんが出会ったばっかりの頃に……僕が言った言葉。
まだ覚えてたんだ」

アイスがとっても懐かしい物を見るような目で……私を見た。
私の頭が紅くなった。
今日……私はアイスにプロポーズする。
氷の羽と光り輝く銀髪を持つ彼女と、私が釣り合うのか、未だに分からない。
でも、私は彼女が欲しいんだ。
だからこそ、プロポーズは記憶に残る最高の贈り物をしたい。
そのためなら……アイスから金を借りて、超高級ガチャガチャしても良かろうなんだぁー!

「アイス!
ギャンブルはこれっきりにする!頼む!」
「それってギャンブル中毒症の人が言いそうなセリフだよねー。
大抵はギャンブル中毒治らないオチだろうし」
「確かにそうだ!?」
「……いいよ、ドラさん。
今までドラゴン教の仕事に付き合わせたのに、全く給料払ってなかったしね。
金貨1万枚あげるよ。
でも、これでギャンブルは最後だよ?
僕、ドラさんにギャンブル廃人になって欲しくないし」
「よっし!
アイスに最高の贈り物をするぞ!」

私はラインを押しのけて、超高級ガチャガチャの前に立った。
アイスの魔法の鞄から、金貨が束になって出てきて、私の手に渡される。
金貨を挿入口に入れると、チャリーンという音が鳴った。
私はハンドルを掴んで回す。
出てきた景品は……赤ん坊のオムツ10年分だった。
うん、幸先が良い。
子作りして子供が出来た時に、役に立つ。
魔法の鞄は幾らでも物資が入るから、保存ペースには事欠かない。
さぁ、万能治療薬が出るまで金貨を入れれば良いんだ!
あ、ハンドルを回したら……大量の粒が入った、大きな瓶が出てきた。
万能治療薬って書いてある。
いやー、私は運が良いなぁー。これはもう神様がアイスとさっさと結婚しろと言ってるに等しい行為……な訳あるかぁ!
リリー!
イカサマしすぎだろ!?
このタイミングで万能治療薬出るってことは、何処かでこの光景を見ているな!?
さっきのオムツ10年分も、結婚生活への支援物資!?
ありがとう!大親友!

「おい!それ!
万能治療薬じゃないか!」

後ろに居たラインが叫んだ。
私は万能治療薬の入った瓶を掴んで、彼の手に渡す。

「奥さんを大事にしてやれよ」
「……ありがとう妖精さん!
これで妻が助かるっ……!
君の活躍を俺は絶対忘れない!
グラム公爵領に来ることがあったら、ぜひとも寄ってくれ!」

挨拶をしてすぐに、ラインが彼の部下と一緒に黒塗りの高級車に乗って遠ざかっていく。
あれほど慌てるという事は……妻がそれだけ大事なのだろう。
いやー、良い事したなぁー。
国宝ルビーを手に入れるついでに、人助けも出来た。
幸せになれよ、ライン。
私は隣にいるアイスと幸せになるからな!

「ドラさん。
たまにはこういう人助けもいいかもしれないね?
でも、僕的には……その優しさを僕だけに向けてくれると嬉しいかな」

美しい。
朝日に照らされた銀髪が彼女の銀髪が美しかった。
私は唾をゴクンッと飲んで覚悟を決めて

「……アイス。
このルビーを受け取ってくれ。
そんで、私の思いを受け取ってくれ」

アイスの両手に、国宝ルビーを置いた。
とっても紅くて輝いている。
彼女の顔は、国宝ルビーのおかげか、とっても良い感じに晴れやかな笑顔になった。
私は頭の中でゴチャゴチャ考えながら……言うべき事を決めて、行動に移した。
私の思いよ!伝われ!

「……アイス。
出会った時から好きだった。
私と結婚してくれ」
「ど、ドラさん?
今なんて言ったの?」
「結婚してくれ。
私はアイスの事を世界一愛している」

重い沈黙。
アイスは涙を流した……え?ひょっとして私は嫌われた?
本体が大きなトカゲだから、やっぱり生理的に駄目だった?
一瞬、不安を抱いたが、アイスが太陽のように明るい満面の笑みを浮かべて

「……ドラさんの気持ち嬉しいよ。
うん、僕、結婚してあげる。
そうじゃないと、ドラさん不幸だもんね」
「よっしゃー!
プロポーズ大成功!
絶対にアイスを幸せにするぞー!」

私が叫ぶと同時に、リリーの城から花火がヒュルヒュルと空高く飛び上がった。
ドカァーン!
朝の空に、大きな光の文字が浮かんでいる。

《結婚おめでとうでありんす!アイスとドラ!》

……この日、私とアイスは強い絆で結ばれた。


おしまい

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