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1国目 税金がない国なのです  前編



税金とは? 公共サービスの費用を調達するための行いなのです。税金がないと道路や橋を作れません。

税金とは? 所得を再分配して、経済格差を少なくするためにも役に立ちます。

税金とは? 出来ればお金を払いたくないと思う人々が多い制度なのです。




私、お金をあんまり持ってないんですよね。
生まれ育った国は、児童の労働を禁止しているから、13歳の女の子には違法な仕事しかありません。
ですから、税金がない国の話を聞いて、そこまで歩いて見る事にしました。
前の世界には、寄付で補ってるバチカンという特殊な国家がありましたけど、一応、そこにも税が存在していたから、完全に税金がない国って1国もなかったんですよね。
きっと、これから向かう先の国は、機械化が進んで人間が働く必要がなくなった良い国なんだと思います。
安全な国で暮らして散歩して、新しい人生設計って奴を作ってみせますよ!









飲まず食わずのまま祖国を出て三週間。
私は歩き続けました。
人間の頃なら確実に餓死している旅路でしたが、このエルフの身体はなぜかお腹が空きません。
水を飲んで光を浴びるだけで幸せな気分です。
衣服も頻繁に洗濯しなくても、綺麗なままなので不思議に満ちています。
エルフってどんな種族なんでしょうか?明らかに人間とは生態が違いますよ、これ。
まぁ本来なら、人に言えない商売をしながら路銀を稼いで目的地まで行くつもりでしたがその必要もなく、楽でいいのです。
荒れ果てた道を歩いて、どんどん進むと、例の税金がない国が見えてきました。
鉄条網(鉄のトゲトゲの線)で国境を覆った国です。たぶん、鉄条網の前の地面は地雷原な気がします。
土の色がそこだけ違いますし、不法入国というものを絶対に許さない国なのでしょう。
ん?……荒れ果てた道?
あれ?この国って、他の国と国交ないんですかね?
普通、交易をするために道を少しは整備していると思うんですけど、道はボロボロの標識が時折あるだけのただの荒地です。
いやー、不安になってきました。
でも、国外を散歩し続けて、賊の類に襲われたりしたら散々スケベーな事をされた末に人生終了ですし、このまま歩き続けようと思います。
歩く事は、私の人生なのです。
歩くと気分が落ち着きます。






……国の入口らしき場所に行ったのですが、そこは3台のごついパトカーと、小銃を持った青い服の人たちがいる検問所でした。
前の世界なら、外国に入国するためにパスポート(身分証明書)が必要だったんですけど、この世界の国はパスポートなしで入れるんですかね?
産まれ育った国で色々と聞いてみたんですけど、皆、他国に行った事がない上に、興味もないから知らないんですよね。
とりあえず、青い服の人たちの所に歩いて近づいてみました。
男は度胸、女も度胸なのです。
すると、青い服の人たちが小銃を向けて

「旅行者かっ!?金を払え!」
「入国料を払わないなら、奴隷として扱う!」
「この荒野を徒歩で歩いてきただとっ!?何者だっ!」

「はい?」

入国料?
私、ほとんどお金持ってないですよ?と悩んでいるうちに、青い服の人たちが近づいてきて、私の両手にガチャッと金属製の手錠を嵌めました。
青い服の人の中で一番偉そうな男が、顔に笑顔を浮かべて

「どうやら金を持ってないようだな!
今日から貴様は奴隷だ!
生きるも死ぬも、持ち主の気分次第の道具だ!」

ひえええええええええええええええええええ?!!!!!
どこの失敗独裁国家なんですかっ!?
私が返事を返す前に、すぐ逮捕とかおかしいのです!
ひょっとして、向かう国を間違えた!?

「おい!コウショク巡査官!
このガキを警察署に連行しろ!
商品価値が落ちるから、手を出すなよ!
手を出したら給料から天引きするからな!」

「分かってますよ!巡査長!
ほら!さっさとこっちに来い!」

青い服の1人が部下に命令を下し、部下さんは私の手錠を引っ張りながら連行しました。
え?警察?
この青い服の人たちが警察官?
嘘でしょっ!?
絶対、マフィアとか、ヤクザとか、ゴロツキの類ですよ!
私は、ここから逃げ出そうと体に力を込めましたが、子供の力じゃ大人の力には叶いません。
下手に抵抗すると殴られそうな雰囲気だったので、おとなしくズルズル連行される事になりました。
いやー、私の人生、波乱万丈すぎですよ。
こうやって、落ち着いた振りしないと泣きそうです。
この世界での海外旅行は命懸けだったんですね。あはははは。







警察官に手錠についた鎖を引っ張られながら、私は国内を散歩しました。
やっぱり散歩は落ち着きます。散歩ポイントが貯まりますし。
国内の方はあちこちが荒れ果てていて、見かける橋は崩壊しそうなほどにボロボロ、ひび割れた道路の上には警察官がたくさん居て、通行人が道を通る度にお金を要求しています。
……やっぱり警察官じゃなくて、ゴロツキなのです。

「ここは警察の土地だ!
通行料を払え!
払わないと逮捕して奴隷にするぞ!」

いやはや、国の治安を守る警察官が市民にこんな事をいう時点で、この国は真っ暗ですね。
通行人たちは嫌そうな顔で、お金を払って道を歩いています。
この国で散歩しようと思ったら、お金が幾つあっても足りませんよ。
時折、お金を払っても無理やり奴隷にされちゃう美少女や美少年とかも見かけて悲惨です。

「へへへへへへ!
可愛いお嬢さんだなぁ!
これは高く売れるぞぉ!」

「おじさん!僕お金払ったよね!?」

「うるせぇー!
この国じゃ俺たちが法律なんだよぉー!
ほら!警察署に来い!」

警察官は、この国では貴族や王様に等しい存在なのです。
一般市民は搾取される家畜ですよ、家畜。
どうしてこんな国になったのか、私には分からないので、私を連行中の警察官さんに聞いてみる事にしました。
この人の年齢は20代前半くらいですかね?
顔は格好いいですけど、ゴロツキと変わらない警察官やっている時点で心が腐ってると思います。

「あの、すいません」

「ん?なんだっ?」

「この国は税金がない国って聞いたんですけど、どうしてこんな国になったんですか?」

「ははははは!
ひょっとして小さいお嬢さんは、この国を良い国だと思って来たのか?
最近、よくいるんだよなぁ。
この国の事を勘違いしてやってくる奴ら」

「え?」

「いいか?税金がないって事は、今まで税金で食ってきた警察が給料を自分で稼がないといけなくなるって事だろ?
つまり治安を守るために武装が許可された警察が、食い扶持を稼ぐために、全てを支配するようになったんだよ!
おかげで、警察官は人気ナンバーワンの職業さ!
良い女も抱き放題!贅沢ができる!
愚かな人民から好きなだけ搾取し放題だ!
警察から見たら、こんなに良い国はないな!」

ああ、なるほど……ひえええええええええええええええええええええ!!!!
とんでもないところに来てしまったのです!
とんでもないキチガイ国家ですよ!キチガイ!
ふぅ、心の中で叫んだら気分がスッキリしました。
あと、どうして税金を廃止したのか気になったので

「また質問なのですが、この国はどうして税金を廃止したのですか?」

知的好奇心を優先しちゃいました。
種族エルフになってから、知的探究心って奴が前よりも溢れてしまって困ったのです。
警察官さんは、若い女の子と会話できる事を喜んでいるのか、笑顔で語ってくれます。
きっとロリコンですよ、この人。

「税金がない理由か?
皆で投票して多数決を取って、税金を取る制度そのものを廃止したんだよ。
誰だって、税金なんて払いたくないからな」

その結果が、警察官が王様のように振舞う失敗国家な訳ですか。そうですか。
この国の人たちは、1年先の未来すら見えない人たちばっかりだったんですね。
……えと、この国で私がいい暮らしをしながら散歩するには、ロリコンの警察官に気に入られる必要があるって事ですかね?
気になったので、私の今後の扱いについて聞いてみるのです。

「最後の質問なのですが良いでしょうか?」

「……さっきから冷静な嬢ちゃんだなぁ。
普通、奴隷にされたら泣くぞ?
わかってんのか?」

「はい、わかっているから冷静なんです。
奴隷になった私はどう扱われるのですか?」

パシンっ!
この発言が生意気だと思われたのか、顔を軽く叩かれました。
……ほっぺが痛いです。

「いいか!
お前はこれから外国に売られて、一生、悲惨な目に遭うんだよ!
お前、まさか、自分だけはひどい目に合わないとか勘違いしてねぇか?
ここはな、現実なんだよ。現実!
お前を助ける奴なんて誰もいねぇんだよ!
……いねぇんだよ!」

困りました。この言動を考えるに警察官さんの過去にあった何らかのトウラマに触れてしまったようです。
どう対応すればいいか分かりません。
泣けばいいんでしょうか?でも、人間は相手の弱みが見えると余計に嗜虐心が刺激される生き物だから、失策な気がします
散歩で全部の問題が解決すると心の奥底で思っているからこそ、私は絶望する必要はないのです。
人生楽観的に考えないと辛いです。
しばらく、私が黙っていると警察官さんは大人しく私を警察署へと向けて連行しました。
その時、警察官さんの口から、ボソッと小さな声が

「……ちっ、幼馴染を思い出させやがって」

きっと、私と似ている可愛い幼馴染だったんでしょう。
このセリフから察するに、その幼馴染は奴隷にされて外国に売られ、この警察官さんと二度と会えなくなったんだなと思いました。
それが切欠でここまでグレて、腐った大人になったんですかね?
人生は理不尽な事だらけで大変ですよ、本当。
……何処かに私を養ってくれる白馬の王子様はいませんかね?









警察署に連れて来られた後は、武器を持ってないかを確かめるために、体のあちこちを触られてセクハラ同然に同然の チェックをされた後、金属製の檻に囲まれた牢屋に私は放り込まれました。
牢屋の中には、9人の可愛らしい子供たちがいて泣いています。
そのうちの1人の15歳くらいの女の子は服がビリビリに破れて、白濁な液体が衣服に付着していて臭いです。
警察官達に手を出されたのでしょうか? 
この娘は胸がFカップくらいあって、すごいナイスバディなのですよ。
男たちが手を出すのも納得です。
男は胸が大きな娘が好きですからね。
でも、今はそんな事よりも、私はそれなりに広い牢屋の中を散歩する事を優先しました。
手持ちの散歩ポイントで、なんとかしないと、きっと私の人生は奴隷としての過酷な日々が待っています。
ここはクールにならないといけないのです。
子供達に同情して一緒に助けようとか思ったら、まず助からない。
犯されても虐待されても希望をなくして諦めてはいけないのです。 
神様は諦めずに足掻く者を助けてくれると決まっているんですよ。
さてはて、少ない散歩ポイントでどうやってチャンスを掴むか、人生一番の大勝負です!



中編に続く


テーマ【現実には絶対存在するはずがない国】

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●なんでもかんでも税金なさすぎて酷い国

●通行料払わないから、奴隷にされる→ しかも、そいつら警察

●警察署の牢屋の中に入れられる。

●そこでこの国のひどい惨状を、同世代の少女に聞く。

●散歩チートを使って、良い男に出会えますようにと願う(良い飼い主にである的な意味で

●奴隷市場に売りにだされて、師匠と出会う。

●弟子入りする。

●師匠、ロリに興味なし。
でも、ロリの一人旅は超危険だと理解したから、師匠にしがみついて積極的なアピール


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