「わたしの技術じゃ、欠損部位を一から創りだすなんて無理。でも眼球があれば、それをヴィルの目として繋げるぐらいは出来る。この目にはそれを可能にする特別な力があるの。とっても時間がかかる手術だったけどね」
遅れて、自分の未熟から来る負傷が、結果的に愛らしい少女の眼球を奪った事を認識する。その重さが全身に、全精神にのしかかる。
ヴィルヘルムは反射的にベッドの横の床に向かって顔を突き出す。
「おぇ……! おえぇ……! おぇええええ……!」
吐いた。
何度も吐いた。
吐き気が、止まらなかった。
「え、あれ、ヴィル……まだ調子が悪いの……? 目の移植が不完全だったかな……? ちょっとまってね、すぐ人を呼ぶから」
そういうとリュリュは「モニカちゃん! ヴィルが起きたけど具合が悪いみたい!」などと扉の外に呼びかける。
すぐさま、がたんと音を立てて扉が開き、勢い良くモニカが入ってきた。なぜかモニカの祖母の姿は無い。
「ヴィル! ヴィル! 目覚めたですか! 良かったです……本当に、良かったです……!」
モニカはベッドの上のヴィルを見て、泣きそうになりながら喜ぶ様子を見せる。
「モニ……カ……俺は……俺は……大変な事を……」