演技館は、扉を潜ると不思議な空間が広がっている。
扉は一つしかないのに、無数の部屋へと繋がっているのだ。
ワルキュラが一人で入れば、スターとは違う部屋へ。
スターが一人で入れば、演技講座の講師がいる部屋へと繋がる……そう、スターは考えている。
「演技に必要な事は、堂々とした姿勢ザマス!
成りきろうと思う心を捨てるザマス!正々堂々と振舞う事で、演技ができるザマスよ!
この、おフランス口調なのも演技ザマス!おフランスは異世界にあるおフランスな国ザマス!
それじゃレッスンスタート!ザマスー!」
実際の所、ここは何でもありの夢の世界。
部屋と講師がその場で生成されている可能性もあるから、深く考えると怖かった。
「早く演技するザマス!
考え事をしながら仕事をするのは駄目ザマス!
仕事とプライベートの切り替えをしっかりするザマス!」
スターは、深く息を吸う。そして、ゆっくり肺の中の空気を吐いた。
気分を落ち着けて、共産国での日常を思い出し、指をズビリッ!と講師に突きつけて――
「あなた、仕事に失敗したわね?」
「申し訳ないザマス!」
「いえ、許さないわ……アナタは開拓地送りよ!」
「良い演技ザマス!その冷たい目線があれば、きっと部下は従ってくれるザマス!
でも、たまには微笑んであげるのも、必要不可欠ザマスよ!
鞭ばっかりを上げていると、部下が自殺して刑事事件になるザマス!
そしたら会社は終了ザマスよ!」
ズビシッ!
スターの心が痛くなった。開拓地は強制収容所という意味だ。
収容所で自殺する人間は大勢居すぎて、数え切れない。
共産国が潰れたら、徹底的に批判されて、痛くて苦しい拷問された末に、処刑ENDだろう。
「ふむ……スター殿は、開拓の仕事も手がけているのか……
投資した費用を回収するのが大変なのに凄いな……」
スターの後ろで、呑気そうに考察しているワー君の存在が微笑ましかった。
見当違いの内容を想像してくれている。そう思うだけでスターは安心できる。
でも、毎回、嘘に嘘を重ねないといけないから、騙しているような気分になって辛かった。
「しかし、左遷先が開拓地とは珍しい……。
普通、辞職届を出してやめたりしないのだろうか?」
「ふ、不景気だから、他に就職先がないのよ。
だから、開拓地送りになっても従ってくれるの
(開拓地という名前の強制労働所に、人民を送っているなんて、ワー君に言えない……)」
「開拓地の事業は儲かるのだろうか?
後世のためになる凄い事業だと思うが、一つの会社がやるには金が足りない気がするのだが……」
「ほ、ほら!
辺境の方が良い資源が眠っている事があるから、色々と役に立つのよ!
それに変革は、辺境からやってくるって言うでしょ?」
「そうか、そういう考え方もあるのか……。
なるほどな。
スー殿は俺より立派な経営者なのだろう。
小さいのに、立派だな……うむ」
何時か、本当の事を話せる日がくるのだろうか?
スターは、目の前の優しい少年に嫌われるのが怖かった。
〜〜〜〜〜〜
「相槌が上手い上司は、部下に好かれるザマス!
好感度を上げるために、相手の事を肯定してあげると良いザマス!」
「ふむ……さすが、だな。俺の事をよく理解している。
その考えを、皆に分かるように話してやれ」
ワー君の威厳がある演技。
でも、どのような時に使う演技なのか、スターには綺麗さっぱり分からなかった。
上司の考えを完全に理解している時点で、その部下が有能すぎる。
普通なら、上司は部下を疎み、部下は上司を無能だと判断して人間関係が破綻しそうだ。
「ワー君、気になったのだけど……それ、どんな時に役に立つ演技なの?」
スターが何気なく問いかけると、ワー君は部屋の壁を悲しそうに見つめて――
「……俺にも分からん。
なぜか部下と付き合っている内に、このパターンができてしまった……。
なぜこうなった……」
「現実の事は突っ込みたくないけど……その部下とっても有能ね。
ワー君のやり方を理解している部下がいるんでしょ?なら、良いじゃない」
ワルキュラ「……え?」
「え……?って何よ?」
「……先ほどもいったが、俺の部下は、俺の事を全く理解してなくて有能なのだ。
その意味が分かるな?」
「意味が分からないわ!?」
「……すまん、癖がでた。
部下が俺の考えを推理して、俺が考えた以上の案を常に出してくるんだ。
全く、やり取りが噛み合ってないはずなのに、いつも上手く行って不思議だ……。
何時、このやり取りが破綻するか、不安でならない……」
「お互いに意思の疎通ができてないとか……いずれ、大きな失敗をすると思うわ。
早めに部下と相談して、分かりあった方がいいわよ?」
「何を言っても……俺は特に何も考えてないとか言っても……部下たちは俺が冗談を言っていると思い込んで笑うのだ……
本当、どうしてこうなった……」
「そ、それはそれで凄いわね……」
やだ、ワー君がストレスで胃潰瘍になるかもしれない。スターはとっても彼の事を心配した。
一応、ワー君は家庭を持つ身なのだ。ストレスで体調を崩したら、妻子の方も悲惨な人生が待っているだろう。
なんとかしてあげたかったが、全く違う人生を歩んでいる相手を、どうアドバイスしてあげればいいのか分からない。
「おや?スー殿の身体が薄くなっているぞ?」
言われて気づいた。スターの体は半透明になっている。これは現実の肉体が起きようとしている証。
幸い、身体全体が透けているから、パンツの柄は見えない安全仕様だ。
昔は服が先に透けて、パンツが見えて大変で、ラッキースケベーだったが、今のドリームワールドは女性の人権にも配慮されている。
「眠りの時間はもうおしまいって事ね……
ワー君に会えたのに残念だわ」
「名残惜しいな……」
「そういえば、ワー君に言いたい事があったの」
「どうした?」
ワー君の疑問に、スターは無言で――返してしまった。
(現実で一度会ってみたいとか、絶対に言えない)
自分は現実では、共産国の最高指導者であり、紅い大魔王と呼ばれている極悪人なのだ。
そんな悪党だと知られたら、ワー君は二度と会ってくれない。そんな気がする。
この心地いい関係を長く続けたいスターは、必死に考えて誤魔化した。
「ワ、ワー君が勤めている会社が倒産したら、ワー君を私の組織で雇ってあげるわ!
じゃ、また、夢の世界で会いましょう!」
「……ああ、またな。
スー殿も頑張って、開拓事業を頑張って欲しい」
自分を見送るワー君の黒い目は、惹き込まれるような感じに、威厳たっぷりだった。
こんな凄そうな少年(50歳くらい?)を雇っている商社は、一体何処にあるのだろうか?
きっと、とんでもない人誑し上司なんだろうなぁと、スターは思い――
〜〜〜〜〜〜〜
「資本主義者が作った天井だわ……」
そして、現実世界で覚醒した。
超高級ホテルの白い天井が、違和感を感じさせる。
自宅以外で起きると、脳はいつも、周りの光景を見慣れていないせいで異物だと感じていた。
スターは、小さな両手を目の前で合わせて、先ほどの夢の世界を思い出す。
「……また、言えなかった。
関係が壊れると思うと、本当の事が言えないわ」
もしも、夢の世界に滞在できる時間に、制限がなかったら。
とっくの昔に、スターは夢の世界で囚われていたかもしれない。
「……いや、私には先にやる事があるわ。
私事は後よ。
世界のために、大魔王ワルキュラを倒さなきゃ。
ワー君との関係は、それから考えなきゃ」
方針を改めて確信して――十日後。
惑星から、尊いような、価値がないような100万の生命が失われた事を、スターは知った。
ワルキュラ(現実の俺は骸骨ですが何か!)
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【オーバーロード】王国「助けて!アインズが来てから、万単位で人が死にまくりなの!」
http://suliruku.blogspot.jp/2016/08/blog-post_43.html
【内政チート】「大砲の運用が大変だって!?」城壁を壊すのに6000発の砲弾がいる」17世紀初頭
http://suliruku.blogspot.jp/2016/07/600017.html
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件のコメント :
(´・ω・`)ゆっくり修正完了
返信削除ワルキュラ(´・ω・`)ホウレンソウが出来なくても、上手く事が進む程度の能力
直接の介入による関税高いなら仲介貿易の積替再輸出でいいんじゃね?
返信削除どうせいい物手に入って高く売れそうなら
密輸とかも商人はいくらでも手掛けるしさ
後第三国で酢キャベツにして加工貿易って手もあるし
まあやりよう位は幾らでもありそうだけどな
しかし首相の道路整備計画は皇帝と首脳陣の意識の違いを考えると
商人を利用しての表向き経済振興策
裏では軍隊を素早く動かせるようにし
暴徒鎮圧を友好(有効)的に行えるように整備する計画にも見えるw
三国志の周瑜の策「道を借りて草を枯らす計」の
外道バージョンに見えるけどなw
まあ戦国などの外交政策では騙される方が悪いからなぁ
経済振興策だと信頼契約重視になるからこの価値観と正反対
そう考えるとさじ加減って大切よね
>後第三国で酢キャベツにして加工貿易って手もあるし
削除ワルキュラ(´・ω・`)しょ、食品業界はめっちゃ人件費がかかるから、機械を導入して、次から対策しなきゃっ……!
道路建設計画の内容「超巨大ビームで山脈吹っ飛ばしてください」
相手国「きゃー!とんでもない化物だぁー」
>原価の50倍ほど高い価格になっているはずだ。
返信削除キャベツって原価2円位だぜ、農協ヒデェ・・・・
ワルキュラ(´・ω・`)そんなに安いなんて、そんなー