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1000日目 楽園の崩壊




マッハ兄貴は大陸からやってきた。

人間とは思えぬほどに鍛えられた筋肉を身に纏い、日本列島まで海を泳いで渡ってきた。

飲まず食わずで海を渡ったはずなのに、すぐに手近な山を登り、周りを高い所から観察するほどに化物だ。

そして、エルフ娘が現地採用したモヒカン達を乗せた海賊船が大陸へと向けて出港しようとしたのが、最初の悲劇の始まりである。

海賊船はボロボロの豪華客船であり、幾らでも人質を載せられる所が素晴らしい大きさの船だ。

海賊船という事がわかるように、豪華客船の頭上には巨大な超絶美少女のエルフ娘が描かれた海賊旗が掲げられ、何処の二次元美少女だとツッコミを入れたくなるほどの美しさである。

そんな野望と野心を秘めた元豪華客船は、港から出港しようとすると、近隣の山に潜んでいたマッハ兄貴が、音速を超える拳を放った。

音速を超えた事で科学では再現不可能といわれている真空波が発生し、全てを切り裂く力を秘めて豪華客船の方へと向かう。

真空波は、豪華客船の上で景気良く叫んでいるモヒカン達すらも真っ二つにし、豪華客船を切り裂くっ!

全てを絶ち切る真空波に切れぬ物は何もないっ!

「ヒャッハー!今日も大陸で略奪・・・か、顔が二つに」

「ヒャッハハ!お前の顔がずれて・・・あれ?視界が」

恐ろしいほどの切れ味っ・・・!モヒカン達は痛みすら感じず、己の身体が真っ二つに分断されたのを認識するのも困難であるっ!

大損害を受けた豪華客船は盛大に波をたてて、海中へと没し、これがエルフ娘が築き上げた自然復興環境団体の崩壊のお知らせになったのだ!












豪華客船を沈没させたマッハ兄貴は自然が回復された森を走るっ!

木々が茂り、今の世界では貴重になった光景を背景に恐ろしいほどの速度で走っているっ!

「・・・こんな環境で育った癖に、鬼畜に育った女帝は許せぬっ!」

エルフ娘のおかげで、ここまで自然環境が再生したのだが、そんな事はマッハ兄貴は知らないっ!

それ以前に、その鬼畜な女帝の顔も本名も知らないっ!

なんとなく、身長2mでおっぱいと筋肉の区別がつかないゴリラのような悪女だとマッハ兄貴は思っている!

エルフ娘と奴隷達の努力の結晶である森林地帯を抜けて、そこから見た光景は、マッハ兄貴の脳内妄想が現実だと理解させるほどに悪辣な光景だったせいで、どんどん外見イメージが可笑しくなるっ!

そこには奴隷達に鞭を打って働かせるモヒカン達の姿あったのだっ!

それぐらいなら、大陸でもよく見かけるが・・・奴隷達の数が段違いであり、明らかに大陸よりも遥かに厳しい重労働を奴隷達はやらされていたっ!

筋肉モリモリの奴隷達が苦しそうな顔で、大陸の奴隷の数倍の速さで植林や畑仕事をやっているのであるっ!

「「「「「「「ヒャッハハハハっ!女帝様のおかげでどんな怪我もすぐに治るぞぉっー!仮病なんて無駄だぁっー!」」」」」」」

「「「「「「働けぇっー!働くんだぁっー!女帝様を喜ばせるためにもっと働けぇっー!」」」」」」

「「「「「「「ヒャッハー!なんて最高の環境なんだぁっー!奴隷がほとんど死なないからすごく豊かだぜぇっー!」」」」」」」

強者が弱者を痛めつけるという労働環境を、マッハ兄貴が許す事はありえないっ!

民衆を虐げるモヒカン達を抹殺するべく、マッハ兄貴は音速を超えるパンチを放つっ!

「マッハパンチッ!」

拳から放たれた真空波は弧をえがくようにモヒカン達を襲う。

一瞬にして3人のモヒカン達の首と胴体の周りを疾走した真空波は、モヒカン達に死んだという事実を自覚させる事もなく、あの世へと葬った。

場に残されたのは、バラバラになったモヒカン達の死体と、それに驚く民衆とモヒカン達だけである。

モヒカン達は、仲間が死亡した事に少し動揺したが、すぐさまに鞭ではなく斧に装備を持ち変えて、犯人探しを開始している。

「どこだぁっー!どこに敵がいるんだぁっー!」

「ヒャッハー!許せねぇっ!刃向かう奴は虐殺だぁっー!」

「でてこないと、ここの奴隷から虐殺だぁっー!」

普段から殺戮と荒事に慣れたモヒカン達は冷静だ。

マッハ兄貴は無力な民衆を殺害される前に行動するべく、空高く飛び上がり、太陽を背にモヒカン達に向けて叫んだ!

「犯人は俺だぁっー!マッハパンチっ!マッハパンチッ!」

モヒカン達は真上を向くと、太陽の光が眼に入ってまぶしくて、マッハ兄貴をまともに視認できないっ!

そんな状況で放たれた真空波はまさに致命的であるっ!

次々とモヒカン達の身体を切り裂き、バラバラの肉塊へと変えてしまうのだ!

マッハ兄貴が地上へと着地する間も、マッハパンチは何度も繰り出され、モヒカン達は数十人単位で被害を出しているっ!

モヒカンのほとんどは沈没した豪華客船の方に乗っていたという事もあり、この土地にいるモヒカン達は壊滅状態だっ!

生き残ったモヒカン達は、マッハ兄貴のあまりの強さに、エルフ娘が住んでいる元東京タワーに逃げ込もうとしているが、既に時は遅しっ!

逃亡している瞬間は隙だらけになるので、マッハ兄貴がそれを見逃すはずがないのであるっ!

「マッハパンチっ!」

背中から真空波を浴びたモヒカン達は、容易く真っ二つに分断され、誰ひとり元東京タワーへと辿りついたものはいなかった。

マッハ兄貴は、ボロボロになって一部が溶けている元東京タワーを見上げ

「・・・これが悪の居城か。」

悪役らしい素晴らしい建造物に敵が住んでいる事にワクワクしていたのである。

マッハ兄貴は基本的に戦闘狂だったのだ。











元東京タワーに入ってからは、モヒカンの精霊さんが迎撃に当たった事で、マッハ兄貴は少しだけ苦戦していた。

今までみたいにすぐ逃げるなんて事はなく、死兵同然でありとあらゆる手段で襲いかかってくるモヒカンの精霊さんに手こずっている。

しかし、マッハ兄貴のマッハパンチの前では、モヒカンの精霊さんといえども、少しだけ強いモヒカンに過ぎず、あっさりと瞬殺されてエルフ娘の部屋へと到達させてしまった。

部屋からは女性のくぐもった声と、モヒカン達の下品な叫び声が聞こえる。

「ま、まさかっ・・・!」

マッハ兄貴は、部屋の中で何が行われているのか予想がつき、扉をマッハパンチで粉々に粉砕すると・・・想像通りの恐ろしい現場を目撃してしまった。

巨大なベットの上で、天使のように美しい金髪巨乳美少女を、複数のモヒカン達が取り囲んで性的暴行を加えているのである。

少女の外見を見るだけで、どれほど恐ろしい凌辱の数々が繰り広げられたのかわかるほどに、少女の全身は白濁な液体に染まっていた。

「許せぬっ・・・!美少女を力づくで犯すという卑劣な行為が許せぬっ!

モヒカンはここで死ぬがいいっ!」

マッハ兄貴は音速を超えるパンチを繰り出すっ!

それは器用に金髪巨乳美少女だけを避け、周りにいたモヒカン達をバラバラの肉片に変える一撃だった!

少女は呆けた様子で、周りが血だらけの肉塊ばっかりという現実に認識がついていけず、茫然としている。

マッハ兄貴は、そんな悲劇のヒロインとなっている少女に近付いて、安心させるように全身を抱き締めて

「もう、大丈夫だっ!君に乱暴を働くモヒカン達は俺が全部退治したっ!」

「な、なんなのじゃっー!よくわからないのじゃっー!」

無論、この金髪巨乳美少女はエルフ娘である。夫同然のモヒカンの精霊さん達と普通の夫婦の営みを繰り広げていたら、夫達がバラバラになっていて驚愕しているのである。

しかも、下手人である身長2mのマッハ兄貴に抱き締められて、慰められている事で余計に混乱していた。

先ほどまで凄く気持ち良かったのに、マッハ兄貴のせいで気分が台無しである。

マッハ兄貴がエルフ娘の事情を完全に無視して、一方的に語りかけてくるのもエルフ娘をいらつかせていた。

「俺の胸でなくんだぁっー!モヒカン達の恨みを全て俺にぶつけろぉっー!

俺は君の事情を知らないが、悲惨な人生を歩んだことは理解しているつもりだっー!」

非常に暑苦しいとエルフ娘は感じている。

エルフ娘はこの状況をなんとかしようと思考を巡らすが、マッハ兄貴の一方的な善意は留まる事を知らないっ!

マッハ兄貴はエルフ娘をベットへと押し倒し、エルフ娘が受けたであろう悲劇の記憶を塗り替えてやろうと、猛烈な愛の告白を実行しちゃったのだ!

これもエルフ娘があまりにも美しくて妖艶で、スキルのせいで余計に魅力的になっているからであるっ!

「お、俺は君の事が好きだぁっー!

あんなゴミ達のせいで汚れた君でも、俺は大好きだぁっー!」

「や、やめるのじゃっー!だ、誰か助けてほしいのじゃっー!

いやぁっー!レイプはいやじゃっー!」

エルフ娘から見れば、夫達を殺害した相手に残酷な寝取られ状態、

マッハ兄貴から見れば、人生で初めて惚れた異性への猛烈でとまらない青春のリピドーっ!

エルフ娘は強制的にマッハ兄貴のお嫁さんにされてしまったのだ!

しかも、行為が終わった後にマッハ兄貴が故郷を見せてあげようと、エルフ娘を御姫様抱っこし、大陸へと帰ろうとしたから最悪である。

「いやじゃっー!わっちはここに残って自然を回復するんじゃっー!」

「俺の故郷は砂漠だらけだが、水も食料もあるオアシスだっ!衣食住の面倒くらいは見れるっ!」

こうして、エルフ娘による自然環境復興の道は、またもや閉ざされた。

モヒカンの精霊さん達を召喚する度に、全てが瞬殺されて絶望的である。

夫婦の営みを何度も続けてしまった事で、奇跡的にエルフ娘の避妊スキルすら無視して、エルフ娘がマッハ兄貴の子を妊娠しちゃったから余計に道は遠ざかっていた。






エルフ娘はマッハ兄貴の家のベットで、大きくなったお腹とともに涙を流し、窓から外を見ている。

オアシスなので木がまばらにあるが、日本にいた頃のように森に囲まれた生活ではないので、ストレスが溜まっていた。

だが、急に窓の外でポツポツと雨が降り出した事でエルフ娘は驚く。

ここ3年間、一度も雨を見たことがなかったために、この世界は雨が降らないと思い込んでいたので驚愕していた。

翌日になると草が芽生え、頻繁に雨が降るようになったので大地に自然が戻る兆しが見え始めているのだ!

そして、エルフ娘が3年間以上の時をかけて、自然を復興させようとした努力は徒労だったと理解し

「わっちがいなくても自然が復興しとるのじゃっー!

わっちは何のために元の世界を捨てて、こっちの世界にきたんじゃっー!

理不尽なのじゃっー!女神様のあほぉっー!」

こんな騒乱だらけの人生を歩ませた女神様をひたすら罵倒したエルフ娘に、久しぶりにメッセージが届く。


【全世界で自然が回復する兆しが見えました。ボーナスとしてスキルスロットを30個から2000個まで拡張します。

これからも、この世界の自然環境保護を子孫とともに頑張ってください。

PS.その世界には核兵器という厄介な爆弾が存在してまして、放置すると人類が定期的に核兵器を使用して、自然環境を滅亡させるので注意してください テヘペロ】


エルフ娘は、このメッセージを見たことで理解してしまったっ・・・!

女神様が、エルフ娘をこの世界に送ったのは自然環境の面倒をずっと見ろという意味であることをっ・・・!

「人類を皆殺しにしないとクリアーできない無理ゲーなのじゃっー!

あんまりなのじゃっー!

わっちの種族はそんなに子孫が産まれないから・・・数の暴力で完全に敗北なのじゃっー!」




【あなたの子供がそろそろ生まれそうです。子供が一度に複数生まれる子沢山のスキルを取得できますが、取得しますか?】


【子沢山lv1を取得しました。】





おしまい







あとがき

(´・ω・`)女主人公は難しいって事がわかった。

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