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一週間後。
2000体の骸骨戦士を引き連れて、シルバーは、人間の村へと向かって進軍を開始した。
プラチナ村には、火縄銃を装備した骸骨を防衛用に残し、兵力を誤魔化すために、大量の藁人形をあっちこっちに設置したから、安心だ。
もちろん、火縄銃用の火薬は村で作っていない。全部、安い中国産で済ませた。
亜人の排泄物じゃ、火薬の硝石が作れない以前に、無数の国々を財政的な意味で消滅させてきたのが『火薬』という物質だから、こんなもんを今の段階で実用化したら、プラチナ村が借金だらけになって破滅する。
『銃を運用するには、膨大な数の役人が必要だお。
火薬を供給するために、農家から強制的に集める法律を作らないとダメだお』
『火薬は新鮮な奴じゃないと、ダメだお。
大量に生産しても、いざという時に使えないお』
現状、一番頼りになるのが、ネット通販ができるシルバーだけのはずだった。
骸骨は役に立たない。そのはずだったが……可笑しい事に、ショタ妖精は気づく。
常に寡黙な動く骸骨達の一部が、流暢に会話しているのだ。
「反逆者に血の制裁をっー!」
「創造主万歳っー!」
「縞々パンツに栄光あれー!」
「ばんじゃーい!ばんじゃーい!」
「なぁ、プラチナ。
……会話している骸骨がいるんだが?」
「ようやくツッコミを入れてくれましたか!
待ってたんですよ!シルバー様!」
嫁のプラチナが、妖艶な笑みを見せ、小さな胸を誇らしげに逸らした。
その小さな膨らみに、微笑ましさをシルバーは感じる。
『銀髪ロリはいつも可愛いお』
『いいなぁ妖精さん、可愛いお嫁さんがいて』
「喋る骸骨の作り方が、とうとう分かったんです!
これで、お父様の時代にあった!高性能な骸骨軍団の再建ができます!
あ、村に残したのは、一番頭が良い骸骨だから、防衛も万全ですよ!」
「喋る骸骨を、どういう方法で作ったんだ?」
ショタ妖精がツッコミを入れると、プラチナは視線を逸らした。
どうやら、話したくないやり方で、頭が良い骸骨を作ったようだ。
「プラチナ……俺たちは夫婦だろ?
隠し事は必要ないと思うんだ。一緒にベッドで眠る中だし」
『妖精さんが俺らの事を隠している時点で』
『説得力が皆無すぎる件』
しばらくすると、銀髪ロリが視線を、シルバーの青い瞳に移して――
「……骸骨を、トイレや肥溜めに入れると、なぜか喋る骸骨になるんですよねぇ。
なぜなんでしょう?
まぁ、原理が分からなくても、特に問題はないんですけどね」
「その前に聞きたいんだが……あの動く骸骨って、どうやって作っているんだ?
今まで聞くのは不味いのかな、と思って聞いてなかったんだが?
この前、話したゾンビを勧誘する以外にも、骸骨を増やす方法があるんだろう?」
『きっと、とんでもない方法だお』
『これ、きっと最高機密だわ』
『死体が動いている時点で、オカルトだな……うむ。
なぜか悪党の軍勢にしか見えないのは気のせいだろうか……?』
恥ずかしそうなプラチナが、口に右手の人差し指を当てて、小さな声で――
「絶対に秘密にしてくださいよ?
豚人間の骸骨に……僕のオシッコをかけているんです。
なぜか亜人の死体だと、動かないんですけど、豚人間や動物にオシッコをかけると、死骸が動くんですよね。
命令に従順で、とっても便利です。まぁ、相手が『無幻』だと、物量を揃えても相手するのが大変なんですけど。
お父様やお姉さまが豚人間に敗れたのも、たぶん、相手が『無幻』だったせいですし。
空を飛べる豚が相手だったら、どんなに物量で優れていても意味ないですよね……」
「ああ、なるほど……」
嫁の説明を聞いて、シルバーはすんなりと、納得できた。
亜人の細胞の中心は、小さな工場で構成され、そこから大量のロボットを生産している。
つまり、吸血姫のオシッコの中に含まれた大量のロボットが、骸骨にとりついて、骨を使って改造工事を行い、死体を動かしているのだろう。
動力源は恐らく、空気中に含まれる成分か。太陽光。
そして、骸骨戦士が、トイレに入ってしゃべれるようになる理由。それは――排泄物を顕微鏡で調べれば分かる事だが、亜人のウンコは水分と、大量のロボットの残骸の塊だ。
骸骨戦士がウンコを大量に浴びる事で、金属資源を吸収。
電子回路を内部に製造したりして、頭が良くなったのだろう。発言は世紀末すぎるが。
「人間どもにっー!血の制裁をっー!」
「殺せー!殺せー!全てを殺せぇー!」
「至高の方々に歯向かうクズをあの世に送れー!」
「殺せー!殺せー!皆殺しだぁー!」
なんて殺戮に飢えた連中だと、シルバーは思った。
これでは大悪党の野蛮な軍勢にしか見えない。見た目が骸骨で怖い上に、発言は殺戮狂。
君主の畏怖は保たれるかもしれないが、絶対、亜人達は恐怖で震えるに違いなかった。
『なんて酷い軍勢だお?』
『……つまり何だ。無人兵器軍団を運用するようなものか……。
そう考えると卑怯すぎるな……うむ』
『この軍勢で負けちゃうプラチナたんのお姉さま達……今頃、豚人間の苗床になっているとお思うお……エロゲーですお』
〜〜〜〜〜〜
骸骨の軍勢が進軍を開始して、しばらくすると、前方に亜人の群れが見えてきた。
獣に近い外見の亜人や、狐耳が生えた娘がいたりと、豊かなバリエーションがある。
当然、エルフや、ドワーフもいた。ただし、妖精は一人もいない。
プラチナが、そんな集団を小さな手で、指し示して――
「シルバー様、見てください!
各集落の代表者たちですよ!」
その代表達を包囲するように、武装した骸骨戦士が500体いる。
代表者はひとり残らず、恐怖でプルプルッ、震えていた――シルバーという新しい秩序を齎す存在そのものに畏怖している。
少しでもショタ妖精に気に入られようと、代表者達は旗を大きく掲げて、高らかに叫んだ。
「ばんじゃーい!シルバー様の復活ばんじゃーい!」
「王妃プラチナ様ばんじゃーいー!」
「白金帝国に栄光あれー!」
「わかるんだよー!シルバー様は王妃とラブラブなんだねー!わかるんだよー!」
「わがらないよぉぉぉぉ!!!白金帝国万歳なんだねぇぇぇぇー!」
『猫娘がたくさんいるお。愛玩動物っぽくて、かわいいお』
『狐娘が巨乳でたまらんお』
『あっちに貧乳エルフ娘がいるお。ファンタジーの正統派だお』
『白金帝国ってなんだお?』
白金帝国。聞いたことがない国名に、シルバーは首を傾げ、嫁に問いかけた。
「なぁ、プラチナ。
白金(プラチナ)帝国ってなんだ?」
「シルバー様のおかげで、支配人口が一気に20倍に膨れ上がりましたから、正式に国名をつける事にしたんです!
ほら!新しい領民が、僕達のために国旗を作って振ってますよ!
シルバー様の大好きな色です!素敵ですよね!あの模様!」
亜人達が必死に振る、大きな旗。
風でゆらめき動く旗の模様は――綺麗な青と白の縞々だ。
どう考えても、あれだ。シルバーがプラチナにプレゼントした、縞々パンティーの美しい柄だ。
「あ、うん。なるほど。
確かに、俺が好む色だ……うん」
『俺らが縞々パンティーを、プラチナたんに送るように命令したせいで、とんでもない事になった件』
『縞々パンツが元ネタだと知ったら……絶対に激怒する奴が出てくると思うな……うむ』
『縞々パンツ帝国wwwwwww』
「シルバー様から貰ったパンツって、履きやすくて素敵なんですよね。
いずれ、素材を解析して、大量生産して売りさばいて、世界中の女性に、この模様を履かせるのが僕の夢の一つです!
あ、黒と紫の縞々パンツとかどうでしょう?
アダルトで汚れが目立ち辛くて、素敵だと思うんです!」
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