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ネット通販は異世界最強なんだよ!by 妖精さん
二章
020「妖精さんと、ルパン3世」



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シルバーの脳裏に、短い異世界人生が、走馬灯のように流れた。
銀髪ロリの美しい裸
抱きついてきた銀髪ロリ。
愛妻料理な豚肉ステーキ。
愛らしい銀髪ロリの笑顔。
停滞した時間の中を、ペロペロ族長が突撃してくる。
方向転換して逃げる時間もない。

(ま、負けたくないっ!
こんな所でっ!俺はまだっ!
プラチナと一緒にデートした事すらないんだぞ!)

『妖精さん、ワルサー忘れてね?』
『ルパンの愛銃が火を吹くのを待っているのぜ』

ネットの声。それで最後の手が残されている事に……シルバーは気づいた。
腰にぶら下がっている自動拳銃ワルサーP38。ドイツ製の命中精度が高い名銃。
後ろにジャンプしながら、ワルサーを右手で取る。
照準をペロペロ族長の胴体に定め、躊躇わずに、超至近距離から引き金を何度も引いた。
銃弾の乾いた音が連続して響き、豚の胸に銃弾がめり込む。
だが、対人用の拳銃弾では、無意味にステータスが高い、2mの豚人間を倒す事はできない。

『皮膚脂肪が防弾チョッキ代わりになってるwww』
『同じ場所を撃つのです!』

ネットの皆の声が届く前に、同じ場所を狙って、シルバーは残りの残弾を全て叩き込む。
銃弾は、ペロペロ族長の防弾チョッキならぬ、脂肪チョッキを突き破り、重要な臓器を破壊。
ここに勝敗は決した。

「……ま、まだ魔法を使えたブヒィ・・・?」
だ、騙されたブヒィ……」

ペロペロ族長はそう言って、お腹から血を噴き出して、仰向けに倒れこむ。

『妖精さんは、とんでもないものを盗んで行きました』
『豚さんの命です』
『さすがルパンの愛銃』

200匹いたペロペロ党と、ただ一人の妖精さんとの死闘は、こうして幕を閉じる。
シルバーは、プルプル震える手で、ワルサーの銃身を掲げて、今までのストレスを解消するために、勝利を宣言した。

「ゆ、友情っ!努力っ!勝利だぁーっ!」

『俺らが居なかったら、妖精さん今頃アッー!展開だったなww』
『確かに、友情・努力・勝利の三原則を満たしているお』

「ぶひぃ……魔法少女には勝てなかったブヒィ……。
最近の魔法は凄すぎるブヒィ……」

『ペロペロ族長が、まだ生きている件』
『すげぇ生命力。まだ喋れる余裕がある……?』

最後の一匹くらい、楽にあの世に逝かせてやろうと思ったシルバーは、ワルサーP38の弾倉を交換して、銃口を倒れ伏しているペロペロ族長に向けた。

「最後の情けだ!」

だが、引き金を引こうとする直前――

『いやいやっ!最後の1匹だから会話しようよ!妖精さん!』
『豚人間の指導者なんだから、きっと良い情報を聞けるって!』
『今後の戦いのために、情報収集はよ!』

ネットの皆から止められた。
恐らく、ネットの皆は知的好奇心に駆られているのだろうなと、シルバーは考えた。

(今更、豚人間を尋問する意味ってあるのかなぁ……。
エロトークを連発するだけのような気がする。
でも、広告収入アップに繋がるかもしれないし、尋問やった方がいいのか?)

十秒ほど悩んだ末に、シルバーは銃口を向けたまま、ペロペロ族長に話しかける。

「なぁ、ペロペロ。
お前はどうして、そんなに……お、女の子をペロペロしたいんだ?」

「ブヒィ……?
顔や、オッパイをペロペロすると……女性は喜んでくれるブヒィ……。
俺はそれが嬉しくて……オヤジに逆らって……ペロペロ党を……結成したブヒィ……」

「いや、無理やり拉致ってレイプしている時点で、その理屈は可笑しい」 

『マジレスwww』
『妖精さん、言葉の攻撃も容赦ないwwww』

「ぶひぃ……?
愛とは奪いとるものブヒィ……。
これがこの世界の真理ブヒィ……。
略奪した後に、ゆっくりと愛を育むのが常識ぶひぃ……」

「普通にプロポーズして、相手の合意を取ってからにしろよ……お前、間違ってるよ」

「お嬢ちゃんのいう事は……良く分からないブヒィ……
愛は……奪わないと手に入らないブヒィ……。
俺、いや俺達は……今まで……そうやって、色んな女性を……お嫁さんにしてきたブヒィ……。
今回は失敗して……俺の命が奪われた……それだけブヒィ……
俺は何も間違ってないブヒィ……能力が足りなかっただけブヒィ……」

「……はぁ、今度は豚以外に転生しろよ。ペロペロ」

最後の最後まで、お互いに分かり合うのは難しい。シルバーは現実の困難さに徒労感を覚えた。
だが、ペロペロ族長が息絶える前に――母親に甘える赤ん坊のような声で、語りかけてきた。

「お嬢ちゃん……」

「……なんだ?」

「俺の親父と祖父は……もっと手ごわい……ブヒィ……」

「え?どういう事だ?」

「妖精娘を……たくさん……ペロペロした……かった……」 

そう言って、ペロペロ族長は、幸せな顔で死んだ。
最後に何を思ったのか、簡単に理解できる終わり方だった。
人間には真似できない綺麗な最後と言えるだろう。

(親父……?祖父……?意味がわからん……)

何にも有意義な情報を得られなかった事に、シルバーは残念な気持ちになった。
間抜けな展開のせいで、緊張感が抜けると同時に、腰も抜ける。
冷たい地面に座り込み、彼は一息吐いた。

「ふぅ……異世界生活一日目で…三回くらい、死ぬかと思った。
ルパン三世の愛銃、買っていて良かった……」

『無駄な買い物して良かったな。俺の助言通り、ワルサー購入して良かったろ?』

「ああ、そうだな……故障した時の事を考えて、予備の銃って必要だなって今回の事で思ったよ……。
もしも購入してなかったら、豚人間の苗床……いや、口で言えない感じに、酷い事になっていたと思う」

『妖精さん頑張ったな!』
『良いファイトだったぜ!』
『アメリカ合衆国 VS インディアンの戦ってこんな感じだったと思うお』
『忘れるな。それは君の力ではない。銃の力だ』
『次は自動小銃を使って欲しいお』

「……銃を使ったせいか……ちょっと肩が痛い。
ちょっと一眠りしたい気分――」

シルバーの愛らしい声は遮られた。
大量の豚人間の声が、洞窟の外から響く。

「ぶひぃー!どうして死体だらけブヒぃー!」
「何があったブヒィー!」
「ペロペロ党の襲撃ブヒィー!?」

凄まじい大量の声。全部、聞くだけで頭が痛くなる豚声だ。
それにシルバーは、手先が震えて恐怖する。

「ま、まだ、たくさんいるのかっ……?」

『いや、この口調からどう考えても……』
『オッパイ党の奴らのセリフですお』
『漁夫の利を得る作戦大失敗してざまぁwww性転換させられて性奴隷ENDはよwww』

よくよく考えてみれば、200匹のペロペロ党が勝利して、兵力に余裕がある事そのものが可笑しかった。
オッパイ党は400匹。下手したら金属器を保有している可能性もある集団なのだ。
そんな集団を、ペロペロ党の力で、短時間で壊滅させるなんて困難すぎる。

(ペロペロが言っていた……オヤジに気をつけろってセリフ。
あれってオッパイ党の族長とか、そういう事を指している表現だったのか……?)

『きっと、オッパイ党の連中は、外で狩りとか、お野菜さん(笑)の収穫とかしてたんだよ』
『妖精さんの戦いは、まだまだこれからだ!完』
『ご愁傷さまです』
『命がピンチになったら、妖精さんのケツを差し出せば大丈夫だお!』

「そんな結末は嫌だ!」

ネットの皆は、安全地帯にいるから他人事感覚で話しかけてくる。
厄介な事に、退路を絶たれたも同然な状態での戦いだった。
ネット口座の残金は9500円
少ししか残っていない。
しかも、ワルサーP38の装填数はたったの7発だ。大軍を相手するには不利すぎる。それに――

『なぁ、妖精さん』
『今まで言わなかった事があるのだが』

「ん?」

『妖精さんの動画な……広告停止されているぞ』
『収入ゼロ状態やで……』
『妖精さんは無職にクラスチェンジした!』

「え?」

『どれだけ頑張っても収入ゼロ』
『ご愁傷様です』

「えぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?
ふざけんな!俺を殺す気か!」

『直立歩行している豚を、大量殺戮する動画を配信したら、そりゃ広告を出しているスポンサーさんが怒るお』
『自業自得だお』
『妖精さんの人生終了です、どうもありがとうございました』

「ふ、ふざけるなっ!
俺は本物の異世界にいて、人助けのためにっ!ここに来たんぞ!
どうして……どうしてっ!広告を停止するんだよ!」

『妖精さん頑張れ』
『諦めたら、そこでショタからロリにクラスチェンジですよ?』

口論している暇はなかった。
オッパイ党の豚達が、広場へと入ってきた。
全ての豚が、ショタ妖精を、ロリ妖精だと勘違いし、欲情し、叫んでいる。

「「ブヒィィっー!とんでもない美少女がいるブヒィィィ!」」
「「貧乳を大きくしてあげるブヒィィィ!」」

シルバーはすぐに、ワルサーの銃口を豚人間に向けて、全弾を発射する。
地獄のような戦いは、まだ、終わらない。
貯金は、1万円を切ってしまった。

『残りの貯金は9500円だお』
『うむ……これは絶対絶命の大ピンチだな……』
『頑張れ妖精さん!なんとかなる!』

 
20話

拳銃弾×50 千円。

消費1000円

残金1万500円 ⇒9500円



(´・ω・`)主人公が今まで購入したアイテムは、こっちに全部纏めた。
http://suliruku.futene.net/Z_saku_Syousetu/Tyouhen/Neltuto_tuuhan/Aitemu.html

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