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プロローグ 全ヨーロッパを敵に回した結果――テンプレ神様転生(絵画付き)
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ナポレオン「地獄のアルプス山脈超えをした時の俺」

コボコボコボコボコボコボコボコボコボコボコボコボコボコボコ
ボコボコボコボコ∧_∧ ∧_∧∧_∧ボコボコボコボコ
ボコボコ∧_∧´・ω・)(´・ω・`)・ω・`∧_∧ボコボコ
ホコボコ(´・ω・)∧_,∧lll ∪)∧_∧・ω・`)ボコボコ
ボコボコ∧_∧ ´・ω∧∪∧(・ω・∧_∧⊂)ボコボコ
コボコ(´・ω・)≡つ);;)ω(;;(⊂≡(・ω・`)___\ボコボコ
ボコボ(っ  つ=つ ( >>1 )⊂=⊂≡ ⊂) \ )ボコボコ
ボコボコ/∧_∧∧_∧ ∧ ∧_∧∧_∧\ボコボコ
ボコボ( ( ´・ω)(  ´・)(    )`  )(ω・` ) )ボコボコ
コボコ(っ  つ/    )(    )   \ ⊂)ボコボコ
ボコボ/   )`u-u'. バ∪ ̄∪バ`u-u'   \ボコボコ
ボコ( / ̄∪ボコボコボコボコボコボコボコ∪ ̄\ )ボコボコ
ボコボコボコボコボコボコボコボコボコボコボコボコボコボコ


「嫌だ。逃げるのは嫌だ。
私はもう逃げない」

初老の男――ナポレオンは死の間際、夢の中で人生最後の戦場を見ていた。
夢の戦場は丘と平原を、人間と馬の死体が地面を埋め尽くし、血と硝煙の匂いで満たされている。
しかも、人間の死体はほとんど若い少年達だ。
まだまだ長い人生が残されていたはずなのに、彼らの物語はここで終わってしまった。
……この光景は1人の男の野望の果てに起きた惨劇。
ナポレオンが貧乏貴族からフランス皇帝へと実力で成り上がり、
300万人のフランス人を徴兵し、
ヨーロッパ諸国を征服して戦い続けた末に起きた大破局――ワーテルローの戦い。

「私は今まで三度、兵士達を見捨てて逃げた。
その度にフランス大陸軍は敗北し、兵士達は私の名前を叫び、異国の地で無残な屍を晒した……だから、私はもう逃げない」
「陛下!お逃げくだされ!」

参謀長スルトが大声を上げて、ナポレオンを必死に諌めようとする。
だが、ナポレオンは首を軽く振ってそれを拒否した。

「私はフランスの国父なのだ!父親が子供を見捨てて逃げられるか!
エジプト、スペイン、ロシア――私が逃げる度にフランスは負けてきた!戦友が死んだ!
だから逃げない!私はここを死守し、兵士達と共に死ぬ!」
「陛下は軍の最高司令官であると同時に、フランスを統治する義務がある皇帝であります!
死ぬ事よりも生きる事を考えてくだされ!
死んだ皇帝は生きた歩兵1人よりも役に立ちませぬ!これは陛下が以前言っていた言葉ですぞ!」

周りに居た幕僚達からも声があがった。

「陛下!祖国を見捨てないでください!」
「陛下が生き残れば、我々が敗北した事にはなりません!」
「どうか!我らに陛下を守る義務をくだされ!」

その言葉と――参謀長スルトが言った言葉がナポレオンの心を揺さぶった。

「陛下!まだ別働隊のグルーシーの軍勢3万が残っております!合流して戦場をフランス国内に移せば勝機があります!ここはお逃げくだされ!」

主力部隊を失い、どう考えても逆転が不可能な状況でも、皆、ナポレオンなら奇跡が起こせると――敬虔な信者のように純粋に信仰していた。


■難易度ヘル(地獄)モード■

時は1815年6月18日、フランスはヨーロッパ同盟軍に包囲され滅亡の危機に瀕していた。
中欧のナンバー1大国オーストリアの軍勢34万人。
北欧のナンバー1大国ロシアの軍勢20万人。
超大国イギリスとプロイセンの連合軍23万人。
時間が経過すればやってくる敵軍、数十万人。
それに対するナポレオンの軍勢は、徴兵した未熟な新兵20万人、足並みが乱れた将軍達。
ナポレオンは奇跡が起きる事を信じて戦いを挑んだが――善戦した末に裏切り者が出て大敗。
十代の若い新兵達は「皇帝万歳!」と叫んで次々と戦場の露となって消え去った。
砲弾と銃弾が大量に空間を切り裂いて飛んできては、フランス兵の身体を一方的に破壊して、大地を血で染め上げる。
とある兵士は、砲撃で下半身を失って泣きながら皇帝万歳!と叫んで永遠に動かなくなった。
ナポレオンは戦場からの4度目の逃亡を実行しながら愚痴るように呟く。

「ランヌ、ランヌ元帥が生きていれば私は勝利していた。
タレイラン外務大臣が裏切らなかったら、その外交力でヨーロッパ諸国を混乱させて勝利できた。
フーシェ警察大臣が裏切ろうとしなかったら、私は不敗のダヴー元帥を戦場に投入できた。
大兵力を与えたブールモンが裏切らなかったら私はイギリス連合軍に勝利できた。
ネイ元帥が昔のままの疾風のような軍人だったらリニーで私は勝利していた。
グルーシーが自分で判断して行動できる軍人だったら3万の軍勢と合流できて、私は彼らを撃滅していた。
死んだ元帥達が生きていたら圧倒的機動力を用いて戦争に勝利できていた。
私がもっと……若ければ勝てていた」

皆、年老いた。
かつてナポレオンの手元に居た有能な軍人達は、長く続く戦争の中、次々と戦場で散り、ある者は裏切って彼の傍には居ない。
ナポレオン自身、無数の病魔に身体を犯され、若い頃のような――常勝無敗の将軍に相応しい活躍は出来ない。
今のナポレオンは病気で体調が崩れ、無理をすれば寝込んでしまう哀れな中年だ。

「私はまだ負けていない!戦争で負けても諦めてたまるかっ!何か他に方法があるはずだ!」

彼は偉大なる国父を目指し戦争政策を続け、全ヨーロッパを敵に回し、勝つために人民を徴兵しすぎてフランスの人口構造に大打撃を与えながら――不屈の意志で突き進み、490万の人間を死なせたナポレオン戦争の終着地点がフランスの大敗北。
最初は良かった。
非凡な才能を持つ軍人皇帝ナポレオンが無能な政権を倒し、人民の幸せを考えた政策を行ってフランスは富み、人民は自由を謳歌した。
ナポレオンに任せれば、フランスは勝利し、ヨーロッパを蹂躙して植民地にする栄光を味わえた。
だが、人民は忘れていた。
天才と言えども、人間は平等に老いて死ぬという事実を忘れていた。
頼れる国父は永久不滅の存在ではなかった。
ナポレオンは胃病、前立腺炎、痔、末端肥大化症、頭にできた血腫による脳の圧迫――身体中が病魔に犯されている。後6年もすれば死ぬ。
そんな人間にフランスの全てを委ねて完全依存した結果が、必然的な破滅。

「嫌だ。このまま終わるのは嫌だ。まだ勝てる。勝てるのだ」

ナポレオンが負ければ、大きすぎる期待を裏切られたと感じた人民達は激怒して、ナポレオンの事をただの独裁者だと評価して見放すだろう。
下手すれば大国フランスの存続すら危うい。
ナポレオンはまだまだ戦えると思ったが、体調を崩した身体では1時間ほどしか指揮を取れない。
現代と違い、指揮官に大きく依存する構造の軍隊では、これは致命的だ。
戦うために必要な熟練した兵士達と高級将校は極寒のロシアの地でほとんど死んだ。
居るのは

「皇帝万歳」「皇帝万歳」

戦場の狂気に取り付かれたまま勇敢に戦い、無謀な正面攻撃を繰り返して皆殺しにされる新兵達。
彼らの目の前にいるのは、捕虜を取らない主義のプロイセン軍。
ナポレオンはまた兵士達を見捨てて逃げて破滅した。
そこに、どんな時でも活路を見出そうとする若き日のナポレオンの姿はない。
病気と老いによって戦う気力を完全になくし、別働隊のグルーシー軍3万と合流する道を選ばず、落ち延び、正当性を完全否定されて皇帝の地位を追われ、イギリスの手で絶海の孤島セント・ヘレナ(アフリカの南西にある島)に監禁されて――ナポレオンは長い夢から目が覚めた。
体は動かない。
瞼も閉じて開けられない。
息も自由に出来ない。
後、30分も経たずに死にそうだ。
だが、不思議と頭は冴えていた。
残された時間で考えた事は、フランス、兵士達……敵味方合わせて490万人を死なせた戦争の栄光。
共に戦い死んだ友。
20年以上従ってくれた古参兵達。
守れなかった祖国。
そして、愛しき妻ジョゼフィーヌの小悪魔チックな笑顔だった。

「軍……先頭……ジョ……ジョゼ……フィー…ヌ」

享年51歳。
ヨーロッパを駆け抜けた英雄はこの世を去った。





■テンプレ転生の始まり■

……気づいたら、ナポレオンは真っ白な空間に居た。
地平線の彼方まで、全て真っ白の可笑しい世界。
彼の目の前に、全裸の金髪幼女天使がいる。

「ナポレオン!周りに迷惑かけるだけかけて、死ぬなんて情けないのです!って言ってみたり?」

愛らしいちっちゃい女の子だ。
背中に白い鳥の羽が生えている所が笑えて――この天使には神々しさを欠片も感じない。
ナポレオンはここが天国なのか?と疑問に思いつつ話しかける。

「小さなお嬢さん。私に何かようかね?」
「とりあえず転生して、世界を滅ぼす化物を倒して欲しいなぁと思ったから、ここに呼んだのです」
「……はっ?一体何を――」
「これから約300年後の世界に、人類を破滅させる恐ろしい恐ろしい青い化物が誕生するのです。
そいつを倒して欲しくて、有名な偉人の中から適当にナポレオン・ポナパルトを選んだのです。
……嬉しいですか?」
「化物はともかく……私は未来の世界で有名なのか?」

心の中でワクワクしたナポレオンの疑問に、幼女天使は何もない空間から分厚い本を出した。
その本のタイトルは【世界に大迷惑かけた奴ら】
金髪幼女は愛らしい笑顔で――スッパリ言い切った。

「この本の巻末にある【世界に迷惑かけた偉人ランキング30】の中から、アナタを選んだのです!
ちなみに1位はソ連のスターリンですです!当然選んで転生させました!」
「ソ連?スターリン?誰だ、それは?」
「20世紀の時代で、結果的に1億人くらいが死ぬ原因を作った紅い大魔王なのです!」
「1億人!?どうやったらそんなに人を殺せるんだ!?……未来世界は大変だ。
ちなみに私は何位だった?」
「30位だったのです!
残念がる必要はないのですよ!」
「あれだけ頑張っても、せいぜい30位止まりか……」

ナポレオンは少し残念に思った。
人生全てかけて、ヨーロッパ大陸を舞台に戦争しまくったのに、世界史的に見ればショボイとか言われたから心が辛い。
幼女天使は、ナポレオンの事なんて気にもせずに大げさなリアクションで本を放り捨てて

「なんとなんと!そんな残念なアナタ!
今、転生すると特典がつくのです!
このカタログの中から一つ選べるのです!
さぁさぁ!異世界で第二の人生を!
ナポレオンの物語はまだまだ終わってないのです!」

幼女天使が緑色のカタログを空間から出して、ナポレオンに渡した。
一瞬、異世界と言われて意味不明だったが、特に深く考えずに、カタログのページをチラチラ捲って見ると、様々な特典が絵つきで描かれている。

【女の子からモテモテになる!ハーレムオリ主属性!】
【最強のチート魔力!】
【天才的な頭脳!】
【一生、お金に困らない金運!
【病気にならない健康な身体】 ※アレクサンドロス大王が選んだから選択できません!
【生涯付き合える最高の大親友が出来る】※スターリンが選んだから選択できません!
【苦労した分だけ周りから感謝される】※チンギス・カーンが選んだから選択できません!
【絵を描く才能】※アドルフ・ヒトラーが選んだから選択できません!

※消滅特典
【人生疲れた、俺は無に帰る】※毛沢東が選んだから選択できません!
【私の魂を犠牲に、幸せな人が増えますように】 ※ポル・ポトが選んだから選択できません!

ナポレオンは自分以外に誰が転生したのか理解した。
そして、皆、生前の悩みがモロに反映された願いを選んでいる所に、人生の業という奴を感じた。

【病気にならない健康な身体】
アレクサンドロス大王は大帝国を建設したが病気で早死にした残念な男。
だから、健康な身体を特典として選んだ。

【苦労した分だけ周りから感謝される】
ユーラシア大陸を席巻したチンギス・カーンが、後世に残した子孫への皮肉――「贅沢できるのは誰のおかげなのか、子孫達は考えもしないのだろうな」から考えて、不幸そうだ。
もっと他人から感謝されたかったのだろう。

【生涯付き合える最高の大親友が出来る】
スターリンという人間の事は知らないが、願いの内容から考えて、きっと超孤独な寂しい奴だったんだろう。

ナポレオンは今までの人生を思い浮かべて、どの特典が一番役に立つのか考えてみた。
力――そんなものは相対的な物に過ぎない。
女からモテモテ――お金と権力があれば女の方から寄ってくる。
お金に困らない金運――これには苦労させられて辛い人生を送ったが、貧乏生活で培った知識と根性が後の覇道を支えてくれた。だから要らない。
私が一番欲しいのは、これだ!

【素晴らしい人間達に巡り会える】

私の選択に、幼女天使は首を傾げた。

「あれ?これで良いのですか?」
「素晴らしい人間達との出会いこそ人生最大の宝。
私が貧乏貴族から皇帝に成り上がる奇跡を起こせたのは……そういう巡り合わせが偶然あったからだ。
だから、私はこの特典が欲しい」
「……そうなのですか、じゃ転生します?」
「その前に、私に倒して欲しい青い化物について教えて欲しい」
「いや、ここで説明しても記憶消去するから意味ないですよ?」
「……おい。
記憶もないのに、どうやって目的を達成しろと?」

ナポレオンは少し不機嫌になった。
幼女天使は憎らしい満面の笑みを浮かべて

「転生したら、前世の記憶も90%くらいの確率で思い出せなくなるからどうでも良いのです。
それに青い化物は、21世紀の日本人なら誰でも知っている存在ですし、説明は意味ないのです」
「私は……人は英雄として生まれるのではなく、人生を足掻いた結果、英雄になれるのだと思っている。
今の記憶と人格なしで、世界を救えと言われても困るぞ」
「いや、世界は救わなくて良いのです。人類絶滅しても構わないから青い化物を倒して欲しいのです」
「ふざけるな!人類が絶滅しても構わないだと!?
天使の格好をしている癖にふざけるな!」
「私は青い化物を倒したいだけなのです。
誕生すると同時に地球を滅ぼし、放置すると全ての時空を支配する支配者になっちゃう化物ですです。
そうなると私的にも困った事になるから、何とかして欲しいのですよ、ほんと」
「……それなら、青い化物が誕生する事そのものを阻止すれば良いじゃないか。
その方がお手軽だろう?」

少しの重い沈黙の後、幼女天使はニッコリ邪悪な笑みを浮かべた。

「それは質問するな、なのです、糞人間。
理解したら、さっさと転生するのです。
私がアナタ達に求める一番の能力は【世界史に大きく名前を残せる異常な悪運】
ただ、それだけなのです」

ナポレオンは理解した、この幼女天使を倒さない限り、人類に明るい未来はない――そう理解したと同時にナポレオンの意識は暗転した。
幼女天使と会話した記憶は消去された。


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銀行家ロスチャイルド「俺のターン!
ナポレオンが勝利したという偽情報を流して、イギリスの株式市場を大暴落させる!
そんでもって暴落した株を買い叩いて大儲け!」

イギリスの資本家達「「「ぐああああああ!!!やられたああああ!!!」」」

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没ネタ

島の高温多湿で劣悪な環境、島の総督ハドソン・ローの無礼な振る舞いに苦しめられ病が進行しつつも膨大な回想録を残し、人々の記憶の中に伝説として残る道を選ぶ事で最後まで足掻いて戦い、倒れそしてついに最期の時を迎える――――そこで昏睡状態の彼の夢と意識はここで途絶えた。


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