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ラッキーの不思議な旅

18国外目 宇宙から来た狸型ロボット



白いローブを着た、小さい金髪の女の子ラッキーは、氷で閉ざされた大陸を歩いていました。
人が住むのが不可能な環境のため、人間の国なんてありません。
居るのはペンギンという鳥モドキや、白熊、時折、襲いかかってくる雪女くらいです。
ラッキーは退屈そうな顔で呟きました。

「人間いないからつまんない。」

いつも頭の上にいるはずの妖精さんは、寒すぎて何度も何度も死んでしまうから、ラッキーの服の中でゆっくりしているせいで、会話相手がいません。
ラッキーは余計に退屈になり、そろそろ空を飛んで、別の地域に行こうかな?と思っていると、目の前に氷漬けにされた青い狸を発見しました。
分厚い氷の中に、間抜けな顔のまま凍っているから、ラッキーは可笑しくてクスクス笑います。
でも、青狸をよく見ると可笑しいのです。
耳がありません。
狸にしては恐ろしいほどに大きく、人間の12歳くらいの子供ほどの大きさがあります。
顔も非常に大きく、顔だけ真っ白で不気味でした。

「うーん、なんだろう?
生命反応ないみたいだし、既に死んでるよね?」

気になったラッキーは、魔法で氷を温めて溶かしました。
具体的には1000度の熱の塊を、氷の近くに放置して、溶けるのを待ちました。
氷が解けると・・・死んでいるはずの青狸が動き出したのです!
ラッキーは心臓がドッキリして驚いて、涙がちょっと出ました。
青狸は笑顔で、ラッキーに頭を下げてお礼を言ってきます。

「やぁ!
僕は宇宙から来た狸型ロボットのタヌキモンだよ!
氷漬けになっている所を助けてくれてありがとう!」

「?
ロボット!」

ラッキーは、ロボット(機械仕掛けの人形)という単語を聞いて、眼をキラキラ輝かせます。
ここまで高性能な会話ができるロボットはそうはありません。
知的好奇心で爆発寸前でした。
だから、ラッキーは青狸に徹底的に情け容赦なく質問責めをしました。

「ねぇねぇ、何処で作られたの?
なんで青いの?
何を目的に作られたの?
どんな機能があるの?
自爆機能とかあるのかな?かな?
耳がないのはなんでなの?
宇宙にも狸が住んでいるの?」

「・・・質問は一つにしてほしいなぁ。
君には悪いけど、僕は忙しいから、すぐに宇宙の平和を守る仕事をしないといけないんだ。」

「うーん、じゃ、【何を目的に作られたの】ていう質問に応えて。」

青狸がとても良い笑顔になります。
使命を果たすために作られた道具ですから、自分の存在意義を話せるのは嬉しいのでしょう。
青狸はゆっくりと誇らしげに説明してくれます。

「僕はね。
宇宙の平和を守る正義の狸型ロボットなんだ。
どんな相手でも、僕にかかれば瞬殺なんだよ。」

「うーん?宇宙平和?
具体的にどんな驚異から宇宙を守るの?」

「僕の最近の仕事だと、宇宙中に版図を広げる邪悪な機械人類の国を、タイムマシンで過去に遡って、ご先祖様ごと皆殺しにして時間軸から消滅させたり
自然を愛する動物達の惑星を守るために、宇宙海賊を壊滅させたり
小さな子どもの夏休みの宿題のために、大魔境や宇宙や海底とかを旅して、子供の宿題を手伝ったり
過去に全滅した恐竜を、地下に逃がしたら恐竜帝国が誕生しちゃったから、後始末をやったり
並行世界を作ったら、大魔王が誕生しちゃったから、後始末をやったり
タイムマシンを悪用する奴らを殺したりとか、そんな仕事をしているよ!」

「へぇ、凄いんだね。」

この話が事実なら、ラッキーを超える戦闘力を青狸が持っている可能性があります。
でも、ラッキーは知的好奇心を満たしたいから、満足でした。
命の危機なんて感じてません。目を輝かしています。

「だから、僕は忙しいんだ。
でも、恩を返さないのは失礼だから、僕が持っている道具を一つあげるよ。」

青狸が、お腹についているポケットを両手で漁って、大きな大きな爆弾っぽい黒いものを出しました。
ポケットのサイズは人の拳よりも少し大きい程度だから、これはありえない光景です。
青狸は素敵な笑顔でそれをラッキーに差し出して説明を始めます。

「銀河系破壊爆弾〜
これはね。宇宙全体で使用が禁じられている爆弾なんだ。
一度起爆すれば、銀河(100兆個の星々)そのものが消滅するから、扱いに困って捨てようと思っていた所なんだ。
これいる?
使うと気分がスッキリするよ?
銀河がまるでゴミのようだ!ってムゥスカ大佐が叫んだ事で有名な爆弾なんだ。」

「うーん、私は自殺願望ないから要らないなぁ。
銀河を吹き飛ばすって事は、この星も吹き飛ぶって事だよね?
なら要らないよ。
他の道具頂戴。」

「君は我がままだなぁー。
生産中止が決まって、マニアに高く売れる爆弾だよ?
使ったら楽しいよ?
なら次の道具を出そう。」

青狸は爆弾をポケットに仕舞って、新しい道具を取り出しました。
次に出したのは、拳サイズの小さなスイッチつきの箱です。
青狸の呑気な解説がまたもや始まります。

「抹殺スイッチ〜
これはね。
抹殺したい相手の顔を思い浮かべて押すだけで、全時間軸から相手を消去しちゃう道具なんだ。
これも宇宙全体で使うのを禁じられているから、捨てようと思っていたんだ。
これ、いらない?
気にいらない相手を消すのは楽しいよ?」

「うーん、それもいらないなぁ。
殺すなら、魔法で殺すから、もっと平和で役立つ物とかないの?」

「君は本当我が儘な娘だなぁー。
将来、嫁ぎ遅れるよ?
結婚はババァになってからだと遅いんだよ?」

青狸はスイッチをポケットにしまいこみ、また両手をゴソゴソ入れて新しい道具を出してきました。
今度は大量の錠剤が入ったガラス瓶です。
そこらへんにありそうな品物でしたが、青狸はゆっくりと解説してくれます。

「若返り薬〜
これはね。飲むと若返る薬なんだ。
君は女だから、きっと欲しがると思」

「いや、私は不老のエルフだよ?
ずっと、老化せずにこの外見だから要らないんだけど・・・」

「じゃ、次の道具を出そう。
これはどうだ〜」

青狸がガラス瓶を投げ捨てて、次のアイテムをポケットから出してきました。
それは大きな電話ボックスです。
ガラスの箱の中にダイヤル式の電話が入っています。
青狸は満面の笑みで説明をやってくれました。

「パラレルワールド製造機〜。
これはね。中の公衆電話に語りかけるだけで、好きな並行世界を自由自在に作りあげる事ができる究極の道具なんだ。
君が宇宙の支配者な世界も作れるよ?
逆ハーレム興味ない?
イケメンに囲まれた人生を送れるよ?
これいらない?
これも宇宙全体で使用を禁じられているから、捨てようと思っていたんだ。」

「私、思ったの。」

「うん?」

「そのポケットみたいに何でも異次元に収納できる道具は他にないの?」

「え?あるけど、それでいいの?
異次元ポケットは安物だよ?
そう滅多な事では壊れないけど、せいぜい100万年くらいしか品質保証ないよ?」

「私は旅をしているから、そういうポケットの方が重宝するよ。」

青狸は、ラッキーの事を欲がない奴だなぁという顔で見ていました。
少しすると、ポケットにゴソゴソ両手を入れて、白いポケットを中から出してきます。
それをラッキーに手渡ししてから

「異次元ポケット〜。
これはね。
異次元に何でも物を収納できる普通の道具なんだ。
本当にこれでいいのかい?」

ラッキーは、青狸から白いポケットを受け取り微笑みました。

「うん、ありがとう。
良いものを貰ったよ。」

「そんなもので喜ぶなら、僕は良い事をしたという事だね。
じゃ、僕はそろそろ仕事をするために、この星から旅たつよ。
君とは二度と会うことはないだろうね。」

「さよなら。
また会えるといいね。」

ラッキーは満面の笑みを向けました。
青狸もそれを見て笑顔になり、とうとうお別れの時間がやってきます。
青狸はポケットから、大きな大きな円盤型の宇宙船を出し、それに乗ろうとします。
ラッキーは、何処に行くのかな?っていう好奇心が湧いたので、最後の質問をしてみました。

「ねぇねぇ、これから何処にいって何をするの?」

青狸【タヌキモン】は素敵な笑みを浮かべて

「僕はね。
旧型ロボットだから、これから分解工場にいってバラバラに分解されて、新しい新型ロボットの部品になるように命令されているんだ。
人格も全部消去されて、今の僕は無に還るんだよ。
 僕 は も う 用 済 み な ん だ。」
 
生きているように見えても、所詮、機械は機械でした。
命令を迷うことなく実行するだけの道具に過ぎなかったのです。
ラッキーは、ロボットは人間と違いすぎて面白いなぁって思いました。







18国外目 宇宙から来た狸型ロボット

おしまい

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●宇宙から来た狸だよ!

●僕はね!
ノビータという子供を、抹殺して全時間軸、宇宙の平和を守るために頑張っているんだ!

●助けてくれたお礼に、アイテムをあげるよ!
どれが欲しい?
銀河系破壊爆弾
抹殺スイッチ
若返り薬
透明人間になれるアイテム
∞にものがはいるポケット→ 妖精さんにつけました。

●これから僕はノビータを探し出して殺すんだ!
宇宙へ飛び立つタヌキモン

●頑張ってね。

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